政府内外のウクライナ当局者は、ロシアの無慈悲な攻撃から国を守り復興するため、米国のテクノロジーを頼りにしています。

例えば、人工知能や衛星画像を専門とする米国のハイテク企業が、ロシアが2022年2月に本格的な侵攻を開始した直後からウクライナと提携を開始しています。

米商工会議所テクノロジー・エンゲージメント・センターによると、米国のハイテク企業はウクライナを支援するために専門知識を活用しながら、人道的支援や現物支援でこれまでに「数千万ドル」を拠出してきました。

技術をウクライナ政府に供与した米国企業もあれば、メディアに無償提供した企業もあります。以下、いくつかの例を紹介します。

ストーリーを伝える

キーウ近郊のアントノフ空港付近で撮影されたMaxarの衛星画像。ロシア軍の大規模な車列の南端が見える。2022年2月28日 (Satellite image © 2022 Maxar Technologies/Getty Images)

キーウ近郊のアントノフ空港付近で撮影されたMaxarの衛星画像。ロシア軍の大規模な車列の南端が見える。2022年2月28日 (Satellite image © 2022 Maxar Technologies/Getty Images)

コロラド州ウェストミンスターにあるMaxar Technologies社は、ロシアによる侵攻が2022年に始まった直後、キーウに向かうロシア軍の車列64キロを衛星画像で捉えました。

同社は過去1年間で、世界中のジャーナリストに200以上のニュース画像を提供したと発表しています。そして、「戦争についてより正確なストーリーを伝え」、偽情報と闘う手助けをしたと述べました。

Maxar社は以下のような情報を提供しています。

  • ブチャでの殺害は演出であったというロシアの主張を否定する衛星画像
  • ロシアの戦争によるウクライナの農業生産への被害状況
  • ロシアがバフムートで爆撃した学校やアパートの画像
  • カホフカ・ダム崩壊後にドニプロ川沿いの都市に発生した洪水の画像
2022年11月30日のMaxarの衛星画像。マリウポリに建設されたロシアの軍事施設 (Satellite image © 2022 Maxar Technologies/Getty Images)

2022年11月30日のMaxarの衛星画像。マリウポリに建設されたロシアの軍事施設 (Satellite image © 2022 Maxar Technologies/Getty Images)

建物被害の記録

サンフランシスコを拠点とするScale AI社は、爆撃の標的となったウクライナの都市の画像収集を2022年3月から開始しました。

商業衛星画像からの情報をもとに、Scale AI社は個々の建物の新たな被害を自動的に検知するシステムを構築しました。同社はその後、データ一式をウクライナ当局に無償で提供しています。

同社が建物の被害状況を毎日更新することで、人道および医療緊急対応チームは、最もニーズの高い地域を支援できるようになったのです。

Scale AI社は、AIに対応するデータ一式をウクライナのパートナーに直接提供しています。「民主主義の価値観を支援するためにAIを活用する」という信念があるからです。

戦争犯罪の起訴

潜在的な戦争犯罪の証拠を検証する捜査官が手にしているのは、データの宝庫です。デンバーに本社を置くパランティア・テクノロジーズ社は、ウクライナ検事総局と協力して、さまざまな情報源の目録化や管理を支援しています。

同社は、ロシアがウクライナで犯した可能性のある約8万件の戦争犯罪に関連する「重要な全データを共有、統合、処理」するために、自社のソフトウェアで捜査当局を支援すると述べています。これには、ブチャ、イルピン、イジューム、ハルキウ地方などでの殺人、破壊、強姦などが含まれます。

(State Dept./M. Gregory)

(State Dept./M. Gregory)

このソフトウェアは、衛星画像に加えて、情報機関などからのデータも収集します。ウクライナの人々がソーシャルメディアにアップロードした写真も含まれます。

ウクライナのアンドレイ・コスティン検事総長は、パランティア社の声明で、これだけの証拠を分析するのは「最新のITソリューションがなければ事実上不可能だ」と述べています。

食糧安全保障の維持

サンフランシスコのプラネット・ラボズ社とNASAハーベスト(食糧安全保障研究者のコンソーシアム)は、2022年2月からウクライナ農務省と協力し、同国の農地を分析しています。

これによりウクライナ当局は、衛星データを使って収穫を監視できるほか、作物の収量予測や、窒素含有量の検出も可能となりました。

画像で暗く見える箇所は未収穫作物の帯。前線に沿って続いている。2022年7月12日~26日にかけて撮影 (NASA Earth Observatory)

画像で暗く見える箇所は未収穫作物の帯。前線に沿って続いている。2022年7月12日~26日にかけて撮影 (NASA Earth Observatory)

ウクライナのタラス・ヴィソツキー農業政策食糧副大臣は4月、農務省とNASAハーベストの協力を称賛し、「この協力で、戦時でも国内農業生産を推定する能力が向上する」と述べました。

プラネット・ラボズ社はまた、住民の避難、地雷除去、建物の被害評価に取り組む人道支援機関にも衛星画像を提供しています。

偽情報やサイバー攻撃の阻止

ウクライナに対して米国は、当初から以下のような技術支援を提供しています。

  • グーグルは、RTやスプートニクといったロシアの国営メディアとつながりのあるYouTubeチャンネルをヨーロッパ全域でブロック
  • フェイスブックは欧州連合と英国でRTやスプートニクへのアクセスを制限
  • マイクロソフト、アマゾン、グーグルはウクライナのIT機関と提携し、サイバー攻撃を阻止

ウクライナ政府は2022年、グーグル、マイクロソフト・アジュール、アマゾン・ウェブ・サービスに「平和賞」を授与しました。この賞は、重要な技術支援を提供した企業の努力に対して、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領から与えられました。

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。