政治家、メディア、調査会社は、有権者の投票動向を探るため世論調査の実施に巨額の費用を投じます。ところが、テクノロジーや費やした金額にもかかわらず、調査結果が時に驚くようなものになることがあります。

アメリカ人は世論調査を深読みしすぎている。こう指摘するのは、ジョン・ゾグビー・ストラテジーズ創業者で世論調査専門家のジョン・ゾグビー氏です。「『この候補者は0.1ポイントで勝利する』といった予想を世論調査に求めているとしたら、そんな予想は出ません」

世論調査はある特定の時間枠の断片を示すものです。世論調査後に有権者に影響を与えるような報道が出てくる可能性もあります。さらに有権者が心変わりした場合、それは考慮されません。(ピュー・リサーチ・センターのコートニー・ケネディ調査研究部ディレクターは、実際このようなことが2016年の大統領選挙で起きたと指摘。)

しかし、このようなことが世論調査に影響を与える可能性がある前でも、世論調査専門家は有権者の投票動向を見極めなければなりません。前回の大統領選には有権者の約56%が投票しました。世論調査専門家がそのグループを対象とした調査をしないのなら、調査結果に価値はありません。

現在の課題

昨今、世論調査の実施は年々難しくなっています。特にアメリカでは他の国よりも厳しい状況に置かれていると、コロンビア大学のドナルド・P・グリーン教授(政治学)は指摘します。アメリカの有権者は以前と比べ世論調査に積極的に回答しない傾向にあります。グリーン教授によると、世論調査への参加を求められた人のうち、実際の回答者の割合は7人に1人です。

ゾグビー氏は電話の回答率が「極めて低い」と言います。アメリカでは近年のセールス電話の増加により、電話に出ない人が増えています。この傾向は特に若者やマイノリティの人たちの間で顕著です。さらに高齢者はオンライン調査に回答しません。

解決策

では、世論調査専門家はどのようにして有権者の横断的データを手に入れているのでしょか。

世論調査専門家は、得られた回答者の意見に加重を行います。実際に回答してくれた人には、調査全体の中で重みを加え、人種、性別、地理を横断した実像を表せるよう結果を調整しています。(ところが2016年には世論調査専門家の予想よりも多くの白人の非大学卒業者が投票。この傾向は特にアッパー・ミッドウエストと呼ばれる中西部の北部州で顕著であった。)

アメリカの国政選挙では、国民による投票が選挙人団の結果と同じというわけではありません。大統領は、国民による一般投票ではなく、各州の選挙人によって選出されるため、世論調査専門家は候補者がリード、あるいは出遅れているような州ではなく、有権者の支持がどちらの方向にも振れる可能性がある「激戦州」により注目します。

2016年の世論調査ではエラー率が過去最低を記録し、2018年の中間選挙でも調査がうまくいったことから、世論調査専門家の中には楽観的な姿勢を示す人もいます。ケネディ氏もその一人で、2016年の州調査で起きた問題は、例えば大卒有権者が多くなりすぎないように結果に加重することで修正が可能だと指摘します。

一方、ゾグビー氏は外国人記者向けの説明会で、「これは熱した炭の上を裸足で歩くような行為」と指摘しています。

(State Dept./B. Insley)

(State Dept./B. Insley)