スザンヌ・マスト

アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は先ごろ、人工呼吸器の試作機を開発しました。NASAによると、この開発のきっかけとなったのは、コーヒーを飲みながらのミーティングでした。

JPLが3月17日に在宅勤務に移行する前の3月11日のことです。コーヒーを買おうと並んでいた機械系エンジニアのデービッド・バン・ビューレンさんは、同じくそこにいたJPLの主任エンジニアのロブ・マニングと、猛威を振るう新型コロナウイルス感染症に対して何かできないかと話し始めました。

「ロブと話をした後で自分の机に戻りましたが、そのことがずっと頭から離れませんでした」とバン・ビューレンさん。「NASAは素晴らしいエンジニア人材と工学能力をもっている。どうやったら今後予想される人工呼吸器の不足を緩和できるだろうか」

NASAのJPL(カリフォルニア州パサデナ)で人工呼吸器の試作機の開発に取り組むエンジニアたち (NASA/JPL-Caltech)

NASAのJPL(カリフォルニア州パサデナ)で人工呼吸器の試作機の開発に取り組むエンジニアたち (NASA/JPL-Caltech)

それからわずか37日後。50人以上からなるプロジェクトチームが立ち上がり、VITALと呼ばれる人工呼吸器の設計、製造、試験が行われました。JPLのオフィスからこのプロジェクトに参加する人もいましたが、ほとんどの人は自宅から参加しました。この機器は重篤な状態にあるコロナ患者を助けるもので、病院で従来使われていた人工呼吸器の供給を強化するものとNASAは説明します。

VITALの試作機がアメリカ食品医薬品局(FDA)から承認を受けると、JPLはVITALを製造したいと応募してきた100社以上の中から、8社を選び製造を委託しました。

現在、アメリカ国内では人工呼吸器の供給が十分であることから、必要な国に輸出されています。

ニューヨーク市マウントサイナイ医科大学。NASAの人工呼吸器をテストした医師とともに (Icahn School of Medicine/NASA/JPL-Caltech)

ニューヨーク市マウントサイナイ医科大学。NASAの人工呼吸器をテストした医師とともに (Icahn School of Medicine/NASA/JPL-Caltech)

バナーイメージ:新型コロナ患者向けの人工呼吸器の試作機製造にあたったNASAのエンジニアたち。(左から時計回りに)ブランドン・メッツ、ショーネシー・グラント、マイケル・ジョンソン、デービッド・バン・ビューレン、ミシェル・イースター、パトリック・デグロス (NASA/JPL-Caltech)