ノエラニ・カーシュナー

米航空宇宙局(NASA)は木星の衛星「エウロパ」で生命を探すミッションを計画中だ。氷で覆われたエウロパの表面を移動できる探査ロボットをこのたび製作した。

「BRUIE」は氷下浮力型探査ロボットだ。動きは敏捷で、水中を浮かんで移動する。ぎざぎざの歯のある車輪が氷で覆われた表面をしっかりと掴みながら進む。耐水性があり、氷下の水中では上下に回転しながら進むことができる。

NASAが開発した海中探査ロボット。アラスカ州ウトキアグヴィク近くの北極圏の湖で、氷下の生命体を探す試験を行った (NASA/JPL-Caltech)

NASAが開発した海中探査ロボット。アラスカ州ウトキアグヴィク近くの北極圏の湖で、氷下の生命体を探す試験を行った (NASA/JPL-Caltech)

NASAは生命体の兆候を確かめようと、エウロパなど氷で表面が覆われている他の惑星の衛星探査に強い関心を持っている。生命体が仮にあるとすれば、ほとんどの場合氷のすぐ下に存在すると考えられているからだ。

このため、BRUIEには高解像度カメラが内蔵され、厚い氷と水の間にある空間の様子を長時間観測できる。

12フレームをモザイク合成した木星側のエウロパの画像。今までで最高解像度の写真である (NASA/JPL/University of Arizona)

12フレームをモザイク合成した木星側のエウロパの画像。今までに撮影された最高解像度の写真である (NASA/JPL/University of Arizona)

木星には衛星が4つある。1609年に天文学者ガリレオ・ガリレイが発見したガリレオ衛星だ。エウロパはこの中で最も小さい衛星で、大きさは月と同じくらいだ。表面温度は月よりもずっと低く、科学者の推定では氷点下162度である。

昨年11月、エウロパと似た環境条件と思われる南極大陸の氷上でBRUIEの試験走行が行われた。BRUIEの氷点下での耐性実験は、BRUIEを搭載したNASAの「エウロパ・クリッパー」探査機が打ち上げられるまで続けられる。このミッションは遅くとも2025年までには始まる予定だ。

バナーイメージ:南極のケーシー基地近くの氷海で耐性試験を行う「BRUIE」探査ロボット