高校を卒業した年の夏、カリフォルニア大学バークレー校で大学生活を始める前に、グレイハウンドバスのパスを買い、アメリカ中を旅することにしました。当時の1カ月パスは75ドルと安く、アメリカとカナダの路線が乗り放題でした。2カ月有効のパスを購入して、南カリフォルニアのパサデナをスタートし、最初にテキサスを目指しました。それから2カ月間、語りつくせないくらいたくさんの、一生に一度だけという経験をしました。その多くを今でも鮮明に覚えています。ロッキー山脈でキャンプし、巨大なテキサス・ワールド・スピードウェイでは、何万人ものカントリーミュージック・ファンと一緒に独立記念日を祝うウィリー・ネルソンのコンサートを楽しみました。ニューオーリンズではプリザベーション・ホールでジャズ・バンドの演奏を聴き、かつて住んでいたニューヨーク州ロングアイランドのノースショア地区も訪ねました。南ボストンにある本物のアイリッシュパブに行き、メンフィスで目を見張るようなミシシッピ川を眺めました。アメリカの美しい景色、文化的多様性、そしてその巨大さに驚きの連続でした。
日本など世界の国々を実際に経験したのはそれから2年後でしたが、この夏の旅は私を変え、私の目を開かせ、自分の国に対する認識を深めるきっかけとなりました。この思いは今も私の中に残っています。この旅によって、私はアメリカ旅行の熱い支持者になりました。だからこそ日本旅行業協会 (JATA) が、今年の「ツーリズムEXPOジャパン2016」を9月に東京ビッグサイトで開催すると知ったときは、とてもわくわくしました。このEXPOでは、地球上のほとんど全ての国々への旅行を広告宣伝するだけでなく、日本の国内旅行の良さをアピールするブースもたくさん設けられていました。数ある外国のブースの中でも、アメリカのブースは巨大でした。アメリカにはお勧めの観光地がたくさんあるのですから、もっともなことです。グレイハウンドバスに乗って旅行しているのを想像しながら、会場を訪れた約20万人の人たちと一緒に数時間、アメリカ旅行をしてきました。
ツーリズムEXPOジャパン2016の開会式
会場では、想像を交えて、いろいろ体験してみました。ルイジアナ州ニューオーリンズの素晴らしいご夫婦の料理人、サマンサ・キャロルとコーディ・キャロルが作ってくれたおいしいシーフード・ガンボをいただき、シカゴから歴史的なルート66を旅しながら、途中道路沿いのレストランで食事をしました。メンフィスのサウスランドパークではバーベキューを楽しみ、ラスベガスではコンサートに行きました。オレゴン州ポートランドへの旅行を勧める形容しがたい青い毛むくじゃらのマスコットに会い、日本から最も近いアメリカの観光地、グアムから来日したミス・アース・グアム、ミスター・グアム、そして伝統的なダンサーたちとステージに立ちました。サイパンのマスコットでサイのような角を持つ人気者パンダ「サイパンだ！」に会い、さらにはミシシッピ、カリフォルニア、ハワイ、コロラド、シアトルなど数多くの観光地の風景とその土地ならではの料理を楽しみました。こうした魅力的な場所へ旅行する際のツアーガイドとして、EXPOは最高でした。どのコーナーの担当者も、彼らの故郷に誇りを持ち、それぞれの土地について十分な知識を持っていました。
JATAの田川会長にもお会いしました。田川会長はカリフォルニア州に数年住んだことがあり、いつも日本の代表団を率いて年に一度開催される米国の旅行見本市を訪れています。今年の見本市はニューオーリンズで開催されました。田川会長は、日本の「観光立国」の信奉者として、他の国の観光地だけでなく日本への旅行も勧めています。しかし心の中ではアメリカへの愛着があるようにお見受けしました。EXPOでは一緒にステージに立ち、私はグレイハウンドバスでの冒険旅行や、屋久島、鬼怒川、伊香保など私がこれまでに訪れた日本の風光明媚な場所や、東日本大震災の被害を乗り越え復興を続ける東北の美しい漁港について話しました。一方田川さんは、ニューオーリンズがどれだけ活気に満ちた楽しい場所であるか、そして自然災害による被害にもかかわらず、回復力に富み、観光客にとって見所がたくさんある町かを雄弁に語りました。
JATAの田川会長と楽しくお話ししました
田川会長のお話を聞いて、日米両国民がそれぞれの国を旅するのは、見たことのない景色を楽しむだけでなく、私たちが大切にする友好関係を新たにすることにつながると、あらためて思いました。旅行とは景色を楽しむ以上に、人と出会い知り合うことなのです。皆さんも旅に出て、キャデラックのオープンカーでルート66を旅をしたり、伊香保の小さな演芸場で落語を聴いてみてはいかがでしょう？
COMMENTS0
LEAVE A COMMENT
TOP