リー・ハートマン

アメリカは、インド太平洋地域のパートナーと共に、新型コロナウイルスや気候危機など国境を越えた脅威に立ち向かうと同時に、より自由で開かれ、強く結びついた地域の構築に取り組んでいます。

バイデン大統領は2022年5月23日、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の立ち上げに際して、「アメリカはインド太平洋地域に深く関与している。関与は長い期間にわたり、友好国、パートナーと共に地域の明るい未来に向けたビジョンを推進する準備が整っている」と述べました。

IPEFには、オーストラリア、ブルネイ、フィジー、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムが参加しています。

IPEFは、アメリカがインド太平洋戦略を前進させるために立ち上げた取り組みの一つです。インド太平洋戦略は、インド太平洋地域のパートナーに寄せるアメリカの決意を確認するもので、世界人口の半数以上が住み、世界経済の約3分の2を占める地域への関与と協力拡大に向けたビジョンを示しています。

アメリカがインド太平洋のパートナーと共に取り組む協力事例を紹介します。

自由で開かれた地域の推進

汚職との闘い:政府は12月、汚職と環境搾取を暴いたマレーシアとバングラデシュの記者など、世界各地で汚職に立ち向かう人々を表彰しました。

民主主義の支援:2021年2月にビルマで起きた軍事クーデターでは、民主選挙で誕生した政権の倒閣、そしてデモ参加者への暴動に関与した軍関係者に制裁を科すなど、ビルマ軍事政権の行動に対して説明責任を求めています。

アメリカは、ビルマを民主国家へと戻すことを盛り込んだ東南アジア諸国連合(ASEAN)の「5項目合意」への支持を表明しています。ASEANには、ブルネイ、ビルマ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国が加盟しています。

関係の深化

過去20年間、アメリカ政府はASEAN諸国に対して、公衆衛生支援として36億3000万ドル以上を拠出してきた。2022年11月12日、カンボジア・プノンペンで開催された米ASEAN首脳会合では、バイデン大統領とASEAN諸国首脳が新たなプログラムと投資への数百万ドルの支援を発表した (© Vincent Thian/AP)

過去20年間、アメリカ政府はASEAN諸国に対して、公衆衛生支援として36億3000万ドル以上を拠出してきた。2022年11月12日、カンボジア・プノンペンで開催された米ASEAN首脳会合では、バイデン大統領とASEAN諸国首脳が新たなプログラムと投資への数百万ドルの支援を発表した (© Vincent Thian/AP)

ASEANアメリカは45年以上にわたるASEANとの協力関係を拡大し、環境・気候変動の対応改善とクリーンエネルギーの推進に取り組み、公衆衛生、運輸、女性の活躍をさらに進める包括的戦略パートナーシップを立ち上げました。2022年度のASEAN加盟国への拠出額は8億6000万ドル以上に上ります。

大使館:ソロモン諸島で大使館を再開し、在パプアニューギニア大使館は、首都ポートモレスビーの新施設に移転しました。ジョー・ザドロズニー臨時代理大使は、11月17日にパプアニューギニアで行われた式典で、「新大使館は、パプアニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツの民主主義、繁栄、安全保障を支援する我々の確固たる決意の象徴となる」と述べました。

クアッド:アメリカ、オーストラリア、インド、日本の4カ国は、「クアッド」と呼ばれる多国間枠組みの下で連携を深めてきました。この枠組みは、民主主義国家が連携することで地域に恩恵をもたらすことができることを示しています。

インド太平洋で外交的存在感を拡大するアメリカ。パプアニューギニアの首都ポートモレスビーに開設した新しい大使館建物 (State Dept.)

インド太平洋で外交的存在感を拡大するアメリカ。パプアニューギニアの首都ポートモレスビーに開設した新しい大使館建物 (State Dept.)

繫栄の推進

APECアメリカは2023年、太平洋諸国の貿易、投資、そして内包的かつ持続可能な成長の推進を目指すアジア太平洋経済協力会議(APEC)議長国を務めます。「全ての人にとって強じんで持続可能な未来をつくりだす」というテーマを掲げています。

ビジネスフォーラム:アメリカは1月12日、第5回インド太平洋ビジネスフォーラムを東京にて日本と共同開催しました。また昨年12月には、4カ国による「クワッド・ビジネス・テクノロジー・フォーラム」の初会合をシドニーで開催しました。

安全保障の強化

AUKUS2021年9月、アメリカはオーストラリア、イギリスと共に、3カ国の安全保障パートナーシップ(AUKUS)を立ち上げました。インド太平洋内外で安全保障および国防上の利益を支援する互いの能力強化を目指します。

災害救助:クアッド諸国は、新たな人道支援と災害救助の取り組みを通してインド太平洋地域全体の脆弱性を地図化し、災害対応力を向上させるよう域内の調整を行います。

国境を越えた脅威に対する強じん性の拡大

コロナ対応:アメリカは、インド太平洋地域の人々に2億4500万回分以上のコロナワクチンを提供してきました。世界各地では、COVAXや他機関と連携し、6億8200万回分以上のワクチンを寄付しています。またクアッド諸国も、アメリカが開発したワクチンをインドで増産し、インド太平洋全域で安全かつ有効なワクチンが入手しやすくなるよう連携しました。

気候変動:アメリカ政府はインド太平洋地域に対して、クリーンエネルギーと適応事業の支援として1億6200万ドルの気候対応資金を提供しています。

バイデン大統領は、「21世紀経済の未来は、ほぼインド太平洋で書かれるだろう」と述べています。

バナーイメージ:アメリカはインド太平洋地域でパートナーシップを拡大している。2022年11月22日、フィリピン・パラワン島で魚の処理を行う人たちと話すハリス副大統領 (© Haiyun Jiang/The New York Times/AP)