相良妃貴 在日米国大使館報道室 インターン

以前、アメリカを旅行したときのこと。手にした25セント硬貨のなかに、裏側の絵柄が異なるものが数枚あることに気がついた。よく見ると、アメリカの州の名が明記されていて、その州を象徴する絵が描かれていた。全て集めると何種類になるのか。絵にはどんな意味が込められているのか。疑問に思い調べてみると、米国造幣局が硬貨に関連するさまざまなプログラムを企画していることがわかった。本稿では、そのうち25セント硬貨を使った2つのプログラムを紹介する。

50州25セント硬貨プログラム

造幣局が、1999年から2008年までの10年間に実施したプログラム。硬貨の裏面にアメリカ50州の名前がそれぞれ刻まれている(表面のデザインは全て同じジョージ・ワシントン)。各州がアメリカ合衆国に加わった順番に、毎年5種類(5州分)の硬貨が発行された。その後、2009年にワシントンD.C.および5つの準州(プエルトリコ、グアム、アメリカ領サモア、アメリカ領バージン諸島、北マリアナ諸島)のデザインの硬貨が追加発行された。

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写真は、このプログラムで発行されたニューヨーク州の硬貨の裏面。ハドソン川とエリー運河を含む州の外形と、州のシンボルである自由の女神が描かれている。縁に配置された11個の星は、合衆国11番目の州であることを意味する。“GATEWAY TO FREEDOM”(自由への入り口)の刻印はニューヨーク州の硬貨のテーマであり、多くの移民を受け入れる玄関口となってきた州の歴史を物語っている。

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こちらは、新たに着任したハガティ駐日米国大使の出身地テネシー州の硬貨。伝統的なアメリカの音楽の発展に寄与した同州をたたえる絵柄になっている。3つの星は、州法で定められた同州の3つの地域を表しており、各楽器はそれぞれの地域で盛んな音楽を象徴する。ギターは州中部、特にナッシュビルのカントリー音楽、フィドル(バイオリン)は東部のブルーグラス、トランペットはメンフィスのブルースを意味する。

「アメリカ・ザ・ビューティフル」25セント硬貨プログラム

2010年に始まったこのプログラムでは、アメリカ50州、ワシントンD.C.ならびに5つの準州のそれぞれにある国立公園や歴史的に意義のある景勝地のデザインを裏面に施した56種類の25セント硬貨を、2021年まで12年かけて発行する。

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写真のハワイ国立火山公園の硬貨には、同公園内にあるキラウエア火山の噴火の様子が描かれている。

このような硬貨プログラムは、各州の権限や特色が強いアメリカならではだと思う。異なる法や文化、自然風土を持つ各州の硬貨を集めることで、違う角度からアメリカの全体像が見えてくるだろう。現在では、これらの硬貨の収集本も発売されている。これからアメリカに旅行される皆さんは、この本を片手に旅をしてみてはどうだろうか。あなたの知らないアメリカが垣間見え、旅をより豊かなものにしてくれるにちがいない。

 

アメリカの25セント硬貨

通常の25セント硬貨の表面には、アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの肖像が描かれている。1米ドルの4分の1の価値を持つことから、通称「クウォーター」(4分の1という意味)と呼ばれ、自動販売機、バス、コインランドリーなど、日常生活のさまざまな場所で使われる硬貨である。

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【硬貨に刻印されている文字】

硬貨にはUNITED STATES OF AMERICAとQUARTER DOLLARの他に、次の文字が刻印されている。

  • E PLURIBUS UNUMラテン語で「多数から1つへ」を意味し、アメリカが多数の州で構成されていることを表している。
  • IN GOD WE TRUST:1782年に議会で制定された公式標語で、「神を信じる」という意味。
  • D」はデンバー、「S」はサンフランシスコ、「P」はフィラデルフィアの造幣局で製造されたものである。