国際宇宙ステーション(ISS)計画で20年以上に及ぶパートナーシップを構築した米航空宇宙局(NASA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、カナダ、ロシア、ヨーロッパの宇宙機関と共に、月軌道を周回する「ゲートウェイ」という小型宇宙船を開発しています。ゲートウェイは、月面での人類の活動をサポートし、将来的な火星探査に向けた経験を提供していきます。

2019年9月、東京で行われた会合で、ジェームズ・ブライデンスタインNASA長官と山川宏JAXA理事長は、現在実施されている両機関の取り組みを歓迎しました。この取り組みは、NASAの「アルテミス」計画にJAXAが参加し、日本人宇宙飛行士が月探査に参加するビジョンを実現するものです。

ジェームズ・ブライデンスタインNASA長官、山川宏JAXA理事長、および奥地弘章トヨタ自動車執行役員の会合が、2019年9月25日に大使公邸で行われた

ジェームズ・ブライデンスタインNASA長官、山川宏JAXA理事長、および奥地弘章トヨタ自動車執行役員の会合が、2019年9月25日に大使公邸で行われた

ゲートウェイが主要な役割を果たすアルテミス計画により、2024年までに女性初の月面着陸と男性による再着陸を目指します。JAXAは、人類の月面での活動を支援するロボットミッションで協力しています。日本は、インド宇宙研究機関との共同研究によるデータを応用するほか、トヨタ自動車と月面車の共同研究を行い、この計画で使用する月面探査車を開発すると報じられています。さらに、日本の新型H3ロケットでゲートウェイに運ばれるJAXAの無人新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)が、給油と物資補給任務に使用されます。

月面での有人着陸システムを描いたイメージ図 (Credit: NASA)

月面での有人着陸システムを描いたイメージ図 (Credit: NASA)

恒星、準星、ブラックホールから放射されるX線を調査するため、2021年初めに始まるX線分光撮像衛星(XRISM)計画では、両宇宙機関の役割が入れ替わります。JAXAが計画を主導し、NASAは主要機器を提供します。NASAはまた、月から火星に向けての広範な探査目標の一端として、JAXAの火星衛星探査計画(MMX)で火星の衛星まで飛行する主要機器を開発しています。

宇宙ミッションに関する日米の有意義な協力は、基礎研究と技術開発の力となり、次世代に刺激を与える役割を果たし、人間とロボットによる共同探査の取り組みを前進させます。

JAXAは「こうのとり」という名の無人宇宙ステーション補給機を開発した。イラストは、メキシコのバハ・カリフォルニア州から約500キロ西の太平洋上に位置するISSに搭載されているロボットアーム「カナダアーム2」から切り離された直後の「こうのとり7号機」(Credit: NASA)

JAXAは「こうのとり」という名の無人宇宙ステーション補給機を開発した。イラストは、メキシコのバハ・カリフォルニア州から約500キロ西の太平洋上に位置するISSに搭載されているロボットアーム「カナダアーム2」から切り離された直後の「こうのとり7号機」(Credit: NASA)

ジョセフ・M・ヤング駐日米国臨時代理大使は10月1日付日本経済新聞に寄稿し、両国共通の目的は有人宇宙飛行、地球・宇宙科学、航空宇宙工学での日米連携や将来の意欲的な宇宙探査計画だとし、「日米同盟は地球、月、火星、そしてその先で、両国のさらなる偉業を達成するための力である」と述べています。

またヤング臨時代理大使は、日米両国は安全保障領域としての宇宙で緊密に連携する必要性も認識していると指摘しています。実際、2019年4月に行われた日米安全保障協議委員会(SCC)で外務・防衛担当閣僚は、宇宙は日米同盟が領域横断作戦にしっかり備えるための優先分野であると強調しました。

ドナルド・トランプ大統領は2019年5月27日、東京で行われた安倍首相との共同記者会見で次のように述べています。「安倍首相との間で、有人宇宙探査における2国間協力を劇的に拡大することに合意しました。我々は月に行き、そう遠くない日に火星にも向かうでしょう。心が躍ります。軍事的見地から見ても、今ほど宇宙の重要性が高まったことはありません」