リー・ハートマン

世界最先端の技術を備えたアメリカのスーパーコンピューターが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と戦う世界中の科学者を支援しています。

先日ホワイトハウスは、アメリカ政府、テック企業、研究大学が連携する「COVID-19ハイ・パフォーマンス・コンピューティング・コンソーシアム」を新たに設立すると発表しました。

トランプ大統領は3月22日、この取り組みの目的について、「アメリカの持つスーパーコンピューティングの力を駆使して(中略)治療法の発見やワクチンの開発を支援すること」と説明しました。

NASAがカリフォルニア州に所有する世界有数の最速スーパーコンピューター「プレアデス」(NASA/Dominic Hart)

NASAがカリフォルニア州に所有する世界有数の最速スーパーコンピューター「プレアデス」(NASA/Dominic Hart)

スーパーコンピューターを活用すれば、これまで何週間、何カ月もかかったウイルスの遺伝子情報や分子形状についての複雑な問題の分析を、数時間、または数日で行うことが可能です。

また、研究者がオンラインポータルに研究計画を投稿し、コンピューティング能力を使った査読や照合ができるようになります。

スーパーコンピューターの多くが、すでに科学の発見に寄与しています。例えば、カリフォルニア州のNASAエイムズ研究センターにあるスーパーコンピューター「プレアデス」は、通常、銀河の中心部に存在する巨大物体のシミュレーションを行っています。新型コロナウイルスとの戦いでは、COVID-19の分析・理解の速度を速めるために使用されることになっています。

テネシー州オークリッジ国立研究所にある米エネルギー省所有の「サミット」は、スーパーコンピューターの中でも最速とされ、200ペタフロップの処理が可能です。スーパーコンピューターの一般基準に照らし合わせると、1秒間に20京(1兆の20万倍)の演算が可能ということになります。

スーパーコンピューター「サミット」の内部 (Oak Ridge National Laboratory/Jason Richards)

スーパーコンピューター「サミット」の内部 (Oak Ridge National Laboratory/Jason Richards)

すでに「サミット」を使って、COVID-19に対し効果をもつ可能性のある、77の小分子薬剤化合物が特定されました。ウイルスが人間の細胞に付着するのを防ぐ化合物を特定する際にも、従来は何カ月もかかった分析時間を、数日に短縮することに成功しています。

エネルギー省のダン・ブルイエット長官は、「エネルギー省は世界で最も速く、パワフルなスーパーコンピューターを複数所有しています。各科学分野のリーダーが、私たちの持つ最先端の発明・技術を駆使してCOVID-19と戦えるよう連携していくことが楽しみです」と語っています。

バナーイメージ:世界で最もパワフルかつ高性能のスーパーコンピューターとして紹介された「サミット」。米エネルギー省のオークリッジ国立研究所。2018年6月8日 (Oak Ridge National Laboratory/Carlos Jones)