レノア・アドキンス

アメリカおよびあらゆる地域の人々の健康を保つ疾病予防管理センター(CDC)。新型コロナウイルスによる公衆衛生の緊急事態に関する報道が増す中、CDCの役割を紹介します。

Q: アメリカ疾病予防管理センターはどのような組織ですか?
A: CDCは、公衆衛生に関する政府機関です。保健福祉省の一部で、連邦政府の内閣級機関です。CDCは健康推進と同時に、感染症・慢性疾患の予防・管理を担います。

コウモリから人間へのマーブルグウイルスの伝染を調べるため、ウガンダのマラマガンボ・フォレストで、コウモリを捕獲するCDCの科学者 (© Bonnie Jo Mount/The Washington Post/ Getty Images)

コウモリから人間へのマーブルグウイルスの伝染を調べるため、ウガンダのマラマガンボ・フォレストで、コウモリを捕獲するCDCの科学者 (© Bonnie Jo Mount/The Washington Post/ Getty Images)

Q: CDCはどのようにして設立されたのですか? これまで公衆衛生上の緊急事態にどう対処してきましたか?
A: 前身の「戦争地域におけるマラリア管理」プログラムに代わり1946年、CDCは「伝染病本部」としてアトランタに設立されました。第2次世界大戦中、蚊が多発する場所に軍事基地が建設されましたが、このプログラムにより、マラリアに感染した蚊から民間人に感染が拡大するのを阻止できました。国内でマラリアが収束するとCDCは、チフス、赤痢、狂犬病、ペストなど他の疾病に対象を広げました。1952年、ポリオの流行で3145人のアメリカ人が死亡し、2万1000人に麻痺が残りました。しかし1955年までに、CDCと共同研究を行っていたアメリカのジョナス・ソーク博士が、初めてポリオに有効なワクチンを開発しました。その結果、1979年までにアメリカはポリオを撲滅できました。

Q: CDCは、2019年新型コロナウイルスにどのように対処しているのすか?
A: CDCは1月20日、中国の湖北省武漢で発生した新型コロナウイルスに対処する公衆衛生パートナーを支援するため、緊急オペレーションセンターを始動させました。センターの専門家は、状況をモニターし情報を共有するほか、公衆衛生に対する危機に備え、迅速に連携し意思決定を行います。この緊急事態に際しCDCは、武漢から避難するアメリカ人に2週間の隔離期間を発令しました。CDCが隔離期間を発令したのは、50年以上の間で初めてのことです。治療法がまだ確立されていない新型ウイルスを調査しながら、CDCは勧告を出しています。「このような流行病の発生に備えるのが、アメリカの公衆衛生専門家の日々の業務です」と、CDCを監督するアレックス・アザー保健福祉長官は述べています。

Q: CDCは外国の援助も行うのですか?
A: 1980年代のHIVによるエイズの流行や、2014年のエボラ出血熱の発生など、CDCには世界的な公衆衛生問題に取り組んできた長年の実績があります。世界各国の当局と連携するのは、今に始まったことではありません。CDCはすでに数百点のテストキットを世界中に送り、さらに数千点を送る計画です。例えば、ベトナムのハノイ、ニャチャン、ホーチミンシティの病院や公衆衛生研究所は、4000点を受け取ることになっています。CDCはまたカザフスタンで、健康ガイダンスをロシア語に翻訳しているほか、海外の多くの病院で、サンプル採取の手順について公衆衛生従事者を対象とした研修を行っています。今回の事態への対応の一環として、中国にはCDCの専門家を置いており、さらに支援要員を派遣する計画です。「我々は、そうならないことを期待しながら、今回の事態が次の世界的な流行になると想定し準備をしています」。CDCの新型コロナウイルス国際対策本部のバーバラ・マーストン博士はこのように述べています。

中国の武漢で2月4日、2019年新型コロナウイルスの感染が疑われる患者から採取した情報を確認するCDC職員 (© Feature China/Barcroft Media/Getty Images)

中国の武漢で2月4日、2019年新型コロナウイルスの感染が疑われる患者から採取した情報を確認するCDC職員 (© Feature China/Barcroft Media/ Getty Images)

バナーイメージ:アトランタのアメリカ疾病予防管理センターで細菌培養に取り組む微生物学者 (© Branden Camp/AP Images)