レノア・アドキンス

アメリカで「代名詞の共有化」が急速に一般化してきています。

アメリカ英語の文法では、三人称代名詞を主語、目的語、所有格で用い、人や人々を表します。

これらの代名詞には、通性代名詞の「they/them/theirs」が含まれています。伝統的には三人称複数の代名詞ですが、今ではノンバイナリーを自認する人や性別情報を共有したくない人の間で使われています。他の代名詞には、女性形人称代名詞「she/her/hers」、男性形人称代名詞「he/him/his」がありますが、「ze/zir/zirs」といった性別を区別しない代名詞を先駆けて使う人もいます。

多くのアメリカ人が、SNSプロフィール、ネームタグ、電子メールの署名の一部に代名詞を追加するようになっており、対面かオンラインかに関係なく、会合やさまざまな場面でこれらの代名詞を明記しています。

設立から5年目を迎える「mypronouns.org」と「国際代名詞の日」の創設者、シゲ・サクライさんは、「they/them/theirs」を明記しています。代名詞を共有することは、相手を知るきっかけになるとサクライさんは考えています。その人が使ってほしい代名詞を知り、それを使うことは、名前や見た目から間違えた性を想定してしまうことを防ぐことができます。

「そうすれば、どのように呼ばれたいかを共有する機会を持つことになります。名前を知ることは大切なことです。そして、どの代名詞を使うか正しく知ることも大切です。私にとって(代名詞とは)、名前、そしてどのように呼ばれたいかの延長線上にあります」とサクライさんは話します。

代名詞の共有は新しいことではありませんが、この20年で国内のLGBTQI+コミュニティーで広がりを見せているとサクライさんは言います。(LGBTQI+とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、インターセックスの人たちを表す言葉で、「+」はLGBTQIの頭文字でカバーしきれていない全ての性自認と性的指向を示しています。)

トムソン・ロイター財団の報告書によると、リンクトイン(LinkedIn)、ツイッター(Twitter)、インスタグラム(Instagram)といったSNSサイトがユーザーに代名詞を明記するオプションを提供しています。ピンタレスト(Pinterest)も間もなく同様のサービスを実施する予定です。

浸透する代名詞の利用

アメリカ社会はこの傾向の受け入れを示しています。ピュー・リサーチ・センターの調査によると、成人の5人に1人は、性別を区別しない代名詞を使っている人を知っています。

バイデン大統領は就任から数日後に、性的指向や性自認による差別を防ぐ大統領令に署名しました。この大統領令には、「性自認や性的指向による差別の防止、取り締まり、そして、性自認や性的指向による差別を禁止する公民権法第7編とその他の法律を完全に施行することは政権の方針である」と記されています。

ホワイトハウスはまた、性別を区別しない代名詞とノンバイナリーの敬称として「Mx」を追加したオンライン問い合わせフォームを新たに設けました。国務省は6月30日の発表で、他の書類に明記されている性別にかかわらず、パスポート申請者が男性か女性を選択できる申請用紙を用意すると述べ、いずれはノンバイナリーやインターセックス、性に関する旧来の観念に合致しない人々のための選択肢を設けるとしています。