ローレン・モンセン

米国の大学はイノベーションの大きな源泉であり、その研究力を測る指標の一つに特許取得数があります。その取得数は、全米発明家アカデミーの「2022年米国で一般特許を取得した世界の大学トップ100」に記録されています。一般特許とは、新規の、または改良された有用な製品、プロセス、機械の創出を対象とする特許です。

米国特許商標庁のデータに基づくこのリストによると、米国の大学は昨年、合計5772件の特許を取得し、上位20校のうち14校を占めました。

このたび米国の一流大学5校の代表者が国務省のShareAmericaの取材に応じ、最近の発見について語ってくれました。

パデュー大学(インディアナ州)では、ルナ・ルー教授率いる土木技師たちが、交通流制御に役立ち、二酸化炭素排出量を削減する「しゃべるコンクリート」を発明しました。埋め込まれたセンサーによって、コンクリートはその強度についてエンジニアと「通信」することができるのです。この「スマート」コンクリートのおかげで、エンジニアはリアルタイムのデータを得られるため、補修が必要な時期を判断するのに役立ちます。これにより、道路に穴ができないようにし、工事による交通渋滞を緩和し、道路の補修にかかる費用を節約できるのです。これらのセンサーは、すでに8州の高速道路に埋め込まれています。この技術は、コンクリート構造物が交通荷重に耐えられるかどうかをテストするために、建設業界が一世紀にわたって利用してきた方法に取って代わる可能性があります。

2022年に特許を取得したアリゾナ州立大学発の技術には、折りたたみ可能なクアッドローター(プロトタイプ)が含まれる (Courtesy of School of Manufacturing Systems and Networks/ASU)

2022年に特許を取得したアリゾナ州立大学発の技術には、折りたたみ可能なクアッドローター(プロトタイプ)が含まれる (Courtesy of School of Manufacturing Systems and Networks/ASU)

アリゾナ州立大学の研究者たちは、折りたたみ式のクアッドローターを開発しました。「ヘリコプターに見られるような4つのローターを備えたドローンの一種」だと、同大学の技術移転・知的財産管理部門であるスカイソング・イノベーションズのカイル・シーゲルは話します。翼が固定されたドローンとは異なり、クワッドローターはその場でホバリングする能力があるため、上空からの撮影や監視に役立ちます。また、クワッドローターは通常、固定翼のドローンよりも正確な空中操縦を行うことができます。必要であれば、狭い場所に入り込むために自身のサイズを小さくすることも可能なのです。

自己輸血、つまり血液ドーピングを検出する方法を考案したのは、デューク大学(ノースカロライナ州)の研究者たちです。世界アンチ・ドーピング機構によって禁止されているにもかかわらず、血液ドーピング(自分の赤血球を保存した後の輸血)は、パフォーマンス向上のために一部のアスリートによって行われてきました。デューク大学の手法が開発されるまでは、このような不正行為を検出することは不可能だったのです。現在では、異なる時間間隔でボランティアの血液細胞からRNAサンプルを8回抽出することで、研究者は血液の保存に伴うRNAの変化を検出できます。

AgZen社の技術を用いて、農薬を含んだ水で処理されたキャベツの葉。ごく少量の植物由来の油で水滴を覆うことで、水滴が葉に付着し、過剰散布だけでなく、廃棄物や汚染を最小限に抑えることができる (Courtesy of MIT News)

AgZen社の技術を用いて、農薬を含んだ水で処理されたキャベツの葉。ごく少量の植物由来の油で水滴を覆うことで、水滴が葉に付着し、過剰散布だけでなく、廃棄物や汚染を最小限に抑えることができる (Courtesy of MIT News)

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちは、植物表面の液体保持力を高めるシステムを開発しました。農薬は昆虫や微生物などを駆除することで農作物の生産性を上げますが、ほとんどの農薬は土壌や大気、水を汚染してしまいます。MITのアプローチは、疎水性(撥水性)がある植物表面で液体を保持することを可能とするため、植物内に吸収される農薬や水分量を増やし、他の場所での農薬汚染を減らすことができます。

テキサス大学システムは、クリアカム社の腹腔鏡手術用使い捨てワイパー「クリアスコープ」の開発を支援しています。クリアスコープにより、外科医は手術中にスコープを取り外し、洗浄を続ける必要がなくなります。医師はクリアな視野を維持したままで、患者の手術を中断せず行うことができます。患者にとっては、手術室での時間が短縮され、安全性が向上します。すでに全米で2000件近い手術に使用され、胸部、一般、婦人科の手術で支持を集めています。

「大学の使命は、研究、教育、サービスです」。テキサス大学システムのチーフ・タレント・アンド・イノベーション・オフィサーであるジュリー・グーンワーデンはこう語ります。「大学は新しい企業へアイデアを提供する大きな源泉なのです。これらのイノベーションは人々の命を救うものであり、私たちはこの仕事に情熱を注いでいます」

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バナーイメージ:パデュー大学のルナ・ルーは、建設業界のコンクリート強度試験方法に取って代わる技術を開発した (© Rebecca McElhoe/Purdue University)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。