駐日米国大使公邸の「グレートルーム」の外で待つ僕は、興奮と緊張で落ち着かなかった。部屋の中にいるのは、自らがマッカーサー元帥役を演じた映画「終戦のエンペラー」についてインタビューを受けているトミー・リー・ジョーンズ、その人。そして僕はAmerican Viewの記者として、彼にインタビューする順番を待っていた。
グレートルームは日米関係にとって特別な歴史的意味を持っている。1945年にあの有名なマッカーサー元帥と昭和天皇の写真が撮影された場所だからだ。実は、2年以上前に「終戦のエンペラー」の製作会社のスタッフが大使公邸を訪れ、実物にできるだけ近いセットを再現するためにグレートルームの写真を撮っていた。この部屋は、トミー・リー・ジョーンズ、マシュー・フォックス、西田敏行、桃井かおりといった日米の大スターたちが出演するこの映画の宣伝イベントの舞台としても使われた。
インタビューが始まり、大学で伝統的な演劇の形態を学んだことがきっかけで、ジョーンズ氏が日本に関心を持ったと知り、僕は驚いた。「世界の演劇史の授業を取り、歌舞伎や能に魅了されたんだ。歌舞伎や能について読んだり、レポートを書いたりすることで、日本の文化への関心がさらに高まったよ。知れば知るほど、もっと知りたくなったんだ」。ジョーンズ氏は他にも、マッカーサー元帥について覚えていることや、今後も強固な日米関係が続いてほしいという希望について語り、オープンな文化交流の必要性を説いた。そして最後に、アメリカや日米関係について知りたいと考える日本の若者へ、次のようなアドバイスをくれた。「もっと本を読んで、たくさん旅行をするように」。JETプログラムで日本にやってきて、地方で英語を教えた僕の経験からも、その通りだと思う。
インタビュー後、ジョーンズ氏はダイニングルームへ向かい、ルース大使や映画の出演者、スタッフと共に昼食をとった。日米の俳優陣がアメリカ大使館の高官と親しく話をしているのを見て、僕は、70年近く前に同じ建物の中であの写真が撮影されて以来、日米関係がどれほど進展したかを考えた。当時は、両国が将来も友好的な外交関係を維持する保証はなかった。だから、この2国間関係の始まりを政治的でない形で検証した映画で日米の俳優たちが共演したのを見て、僕はとても感動した。この映画のような日米の共同プロジェクトは、両国の建設的な関係のシンボルだ。僕も大使館で働くことで、この関係の強化に少しでも貢献する機会を持てたことをとても光栄に思う。
マシュー・ライト
2013年夏、在日米国大使館報道室でインターンとして勤務。バンダービルト大学大学院2年生で、教育学修士号(高等教育行政学)を取得予定。2009年に行政学およびアジア研究の学位を取得してコーネル大学を卒業。その後「語学指導等を行う外国青年招致事業」(JET)に参加し、和歌山県で3年間、英語教師を務めた。
COMMENTS2
マシューさん、はじめまして。
トミー・リー・ジョーンズさんは「逃亡者」からのファンですが、今回の「終戦のエンペラー」については戦後GHQの東京裁判等に関心があったので早々に見に行きました。
1つ1つの台詞の意味が理解できる程私自身が大東亜戦争に関心を持っていた事、米国の作品にもかかわらず当時の日本の状況を理解する台詞が有った事を驚きました。
これからを生きる物として子供たちに何を伝えていかなければならないかと言えば、事実をきちんと伝え「歴史は続いている」という事も伝えなければなりません。
この映画はそういった意味で子供にも勧められる作品でした。
これからの世界は1国のみの利益の追求では立ちいかなくなります。どうか世界が共に利益を得、共生できる国づくりをしていただきたいと願うばかりです。
私はLOSTの大ファンで、マシュー・フォックスさんに目がいってしまいました。この部屋は私達日本人にとってとても重要な場です。
Dマッカーサー閣下と昭和天皇のこの写真から、1920年にかじった民主主義を、その20年間にわたる反動を経て、再び立ち戻った場所だからです。以後、私達の国は、自由と民主主義を標榜する法治国家として、西側の一員として歴史を重ねています。8月15日の敗戦の日を前にライトさんの素敵なレポート、改めて感銘受けました。
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