メラニア・トランプ大統領夫人は、自ら主導するイニシアチブ「Be Best」(最高になろう)の立ち上げを発表し、その発信力を生かして自らが関心を持っている問題に取り組んだ歴代大統領夫人の仲間入りを果たしました。

メラニア夫人は、このイニシアチブを、子どもたちが健全な社会環境で、心身ともに健康で過ごせるようにするために、さまざまな支援プログラムを推進する啓発運動と位置づけています。そして「健やかな心身」「ソーシャルメディアの活用」「オピオイド乱用対策」の3つを柱に掲げています。

このイニシアチブの目標は、責任あるインターネット利用および意思決定を促し、オピオイド中毒で苦しむ子どもたちや家族を支援することにあります。

「直面している多くの問題で子どもたちを支援することは、私たちの世代の責任であり、道義的な義務です」とメラニア夫人は語ります。「子どもたちに健康でバランスの取れた生活の大切さを教えることは、大人の責任であると強く感じています」

生まれながらに薬物中毒の乳児の問題などを知ったことをきっかけに、子どもの福祉に関する取り組みを始めたメラニア・トランプ大統領夫人 (© Andrew Harnik/AP Images)

長年の伝統を踏襲

メラニア夫人は、2005年から2009年まで米国赤十字社で親善大使を務めていました。今後、大統領夫人として取り組む課題を決めていくなかで、人道的なボランティア活動の経験が役立つでしょう。

公共心にあふれた歴代大統領夫人たちは、その立場を生かして、自身が関心を寄せる問題の啓発活動に取り組んできました。Be Bestを立ち上げたメラニア夫人も、彼女たちと肩を並べることとなります。

エレノア・ルーズベルト大統領夫人は1930年代から1940年代にかけて、世界大恐慌の影響を受け、経済的困窮に苦しむアメリカ市民に目を向けました。

ジャクリーン・ケネディ大統領夫人(1961年~63年)は、ホワイトハウスの歴史的調度品を保存する資金を集めました。また、アメリカ人の詩人や作家、クラシック音楽家たちをたたえる文化的なイベントも開催しました。

ホワイトハウス見学ツアーをするテレビ番組で、所蔵されている調度品を紹介するジャクリーン・ケネディ大統領夫人 (© CBS Photo Archive/Getty Images)

レディ・バード・ジョンソン大統領夫人(1963年~69年)は、野生動物の保護など、環境問題に熱心に取り組み、高速道路や都市の美化プロジェクトも提唱しました。1970年代には、ベティ・フォード大統領夫人が、タブー視されていた乳がんの話題を取り上げ、乳房切除を受けた自身の経験を臆することなく語り、乳がんについての啓蒙活動を行って偏見をなくすために尽力しました。

ロザリン・カーター大統領夫人(1977年~81年)は、心の健康を自らの活動のテーマとしました。ナンシー・レーガン大統領夫人(1981年~89年)は、違法薬物の乱用撲滅を目指す「ただ『ノー』と言おう」(Just Say No)活動を立ち上げました。

バーバラ・ブッシュ大統領夫人(1989年~93年)は、読み書き能力の向上やボランティア活動の普及に尽力しました。図書館司書であった義理の娘、ローラ・ブッシュ大統領夫人(2001年~09年)も同様に、世界全体の識字率向上を目指すプログラムを推進し、読書の効用を訴えました。

子どもたちに本を読み聞かせるバーバラ・ブッシュ大統領夫人(1989年)。大統領夫人時代に、家庭の識字率向上を目的とした「バーバラ・ブッシュ財団」を設立しました (© Charles Tasnadi/AP Images)

直近では、ミシェル・オバマ大統領夫人(2009年~17年)が、運動と健康的な食生活の重要性を掲げ、子どもの肥満防止を目的とした「身体を動かそう」(Let’s Move)キャンペーンを立ち上げました。

メラニア夫人は、大統領夫人となって以降、全米各地を訪問し、学校や病院で子どもたちとの交流を図ってきました。オピオイド危機について深く知るようになったのは、オピオイド乱用の影響に苦しむ家族との面会や医師との意見交換、リハビリ施設への視察がきっかけでした。

メラニア夫人は、オピオイド中毒の親から虐待を受けた乳幼児や子どもを憂慮しており、また同時に全ての子どもたちの健康的な発育を支援しています。「心配していることや考えていることなど、大人が子どもたちの声に真剣に耳を傾ければ、社会や世界に積極的な貢献ができる、幸せで生産性の高い人になるために必要な支援や手段を、子どもたちに提供することができます」とメラニア夫人は語ります。