リー・ハートマン

インド太平洋地域の国々はパートナーシップを組み、衛星技術を利用して自国の海域を監視する国々を全域で支援し、違法漁業の防止や人道支援・自然災害への対応に役立てています。

クアッドパートナー(米国、オーストラリア、インド、日本)は5月24日、東京で開催された首脳会合で、「海洋状況把握のためのインド太平洋パートナーシップ(IPMDA)」への支持を発表しました。

IPMDAを通じてインド太平洋諸国は、無線通信で船舶を識別する低軌道衛星と自動追跡システムにより、各国の海上境界線と国際シーレーンの監視を可能にする技術を共有することになります。

ホワイトハウスによると、この新しいプログラムにより、「ダーク・シッピング(注:自動船舶識別装置を作動させずに航行すること)や、海上での集合など、戦術レベルの活動が追跡できる」ようになります。そして、この新プログラムは、「気候や人道的事案に対応し、漁業を保護するパートナー諸国の能力を向上させる」と述べています。

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相、米国のジョセフ・バイデン大統領、インドのナレンドラ・モディ首相、日本の岸田文雄首相。5月24日、東京で開催された日米豪印首脳会合で (© Evan Vucci/AP Images)

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相、米国のジョセフ・バイデン大統領、インドのナレンドラ・モディ首相、日本の岸田文雄首相。5月24日、東京で開催された日米豪印首脳会合で (© Evan Vucci/AP Images)

国によっては、沿岸から200海里(370キロメートル)離れた排他的経済水域を効果的に監視する資源が十分でない場合があります。IPMDAの一環として、パートナー諸国は、それぞれの海域をほぼリアルタイムで監視できるよう、インド太平洋地域の地域情報融合センターを通じて協力する予定です。

また、クアッドは他のインド太平洋諸国に以下の支援をしています。

  • グリーン輸送回廊とクリーンエネルギーの開発
  • サプライチェーンの耐性強化とオープンで安全な5G通信ネットワークの開発
  • COVID-19対策として、これまでに2億5700万回分のワクチンをインド太平洋諸国に寄贈
  • インフラ整備に今後5年間で500億ドル以上を投資

この海上監視プログラムは、インド太平洋諸国の災害対応を支援するために衛星を利用した米国の他の取り組みに基づくものです。米国は衛星機器を配備し、接続が制限された地域でテキストメッセージによる警報や他の情報を発信できるようにしています。

オーストラリアの元首相でアジア・ソサエティのケビン・ラッド会長は5月26日、クアッドがこの新しい海洋領域認識イニシアチブを支援することは、インド洋と太平洋の島しょ国が漁業資源や他の海洋資源を保護するのに役立つと述べました。

「私は自分の経験から、この取り組みが太平洋の全ての小さな島国から歓迎されていることが分かります」。ラッド会長はこう述べています。

バナーイメージ:4月18日、フィジー沿岸沖で漁船に乗り込む米国沿岸警備隊とフィジーの法執行官。米国とクアッドパートナーは、他のインド太平洋諸国の経済水域の監視を支援している (U.S. Coast Guard/Petty Officer 1st Class Nate Littlejohn)