ロシア国営メディアがプーチンの対ウクライナ戦争について虚偽の情報を次々と流す一方で、ロシア政府は真実がロシア国民に伝わらないよう独立系メディアへの取り締まりを強化しています。

ロシア政府の新たな規制の導入により、ほぼ全ての国内外の独立系メディアが閉鎖や休止に追い込まれています。

ロシアメディアは、プーチンによる対ウクライナ戦争を「特別軍事作戦」と呼ぶことが義務付けられています。

3月4日、プーチンはロシア軍について虚偽の情報を流したものに最長15年の懲役を科す厳しい法律に署名しました。「特別軍事作戦」遂行中に、外国、外国機関、国際機関を支援した国民は、収監される可能性があります。

標的となる独立系ニュースメディア

国内最後の独立系ラジオ局、エコ・モスクビーは、連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督庁(ロスコムナゾール)から「過激派」、「偽情報を流していると」と告発され、3月3日に閉鎖されました。当局はエコ・モスクビーのウェブサイトへのアクセスを遮断、ラジオ放送も中止し、代わりに国営のラジオ・スプートニクと置き換えました。

テレビ局ドーシチ(ロシア語で「雨」)の職員たちは、新しい法律への抗議として、チャイコフスキーの白鳥の湖の曲を流しながら放送局を後にしました。ソ連時代、政治指導者が亡くなった時に放送局の全チャンネルが流した曲です。同じ曲が、1991年のソ連崩壊時にも流れました。

ドーシチはロシアによる対ウクライナ戦争を過度に取り上げたとして、当局によりウェブサイトへのアクセスが遮断され、事業休止に追い込まれていました。

ロスコムナゾールはまた、ロシア語でニュースを提供するBBC、ボイス・オブ・アメリカ、ドイツのドイチェ・ヴェレのウェブサイトへのアクセスも遮断しました。

ラジオ・フリー・ヨーロッパおよびラジオ・リバティーの全てのロシア語サイトは、コーカサス、シベリア、タタール地域を含むロシア全域で閲覧不可となっています。両局とも、職員の安全懸念からロシア内での事業休止を余儀なくされました。

他にもニューヨーク・タイムズ紙、CNN、ワシントン・ポスト紙、ブルームバーグ、ABCニューズ、ディスカバリーといったアメリカの独立系報道機関が、新しい法律のためにロシアでの事業休止を決定しました。

ロシア当局はまた、数百万人のロシア人が国内外のユーザーと情報共有や交流するために利用しているフェイスブックやツイッターへのアクセス妨害やあからさまな遮断も試みています。

ラジオ・フリー・ヨーロッパおよびラジオ・リバティーを含むモスクワの独立系報道機関は事業休止を余儀なくされた (© Evgenia Novozhenina/Reuters)

ラジオ・フリー・ヨーロッパおよびラジオ・リバティーを含むモスクワの独立系報道機関は事業休止を余儀なくされた (© Evgenia Novozhenina/Reuters)

ジャーナリスト保護委員会のヨーロッパ・中央アジア管轄プログラムコーディネーターのグルノザ・セッドは、「ロシア当局は、2月24日のウクライナ侵攻から迅速に動き、情報を徹底的に検閲する体制を立ち上げ、情報の自由な流れを制御している」と指摘しています。

政府とその息がかかった報道機関が他国への侵略を虚偽の言葉で表現するのは初めてではありません。1939年のポーランド、1979年のアフガニスタン、そして2008年のジョージアへの侵攻も「自由作戦」や「特別軍事作戦」、「国際支援」という名前で報道されました。

ラジオ・フリー・ヨーロッパの社長、ジェイミー・フライは3月4日、「プーチンは国民にウクライナでの戦争の範囲や犠牲者数について嘘の情報を次々と与えている」と述べています。

バナーイメージ:CNNは新しい法律が独立系報道を処罰の対象としたことを受け事業を中止した。CNNはスローガンとして「facts first(事実主義)」を掲げる (© Ron Harris/AP Images)