米国の最高裁判所は2020年6月15日、ゲイやトランスジェンダーの職員は、差別を禁止する公民権法で保護されていると判決を下しました。ここで、働くLGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)による米国実業界への貢献に焦点を当ててみるのもいいでしょう。米国の小売業の現場、旅行業界、そしてハイテクイノベーションの最前線で、ビジネスリーダー的存在のLGBTIを紹介しましょう。

メッセージを発信するトーマス・サンチェスさん

2017年、カリフォルニア州で開催されたトレバープロジェクトのイベントに出席する トーマス・サンチェスさん (© Phillip Faraone/Getty Images)

2017年、カリフォルニア州で開催されたトレバープロジェクトのイベントに出席する トーマス・サンチェスさん (© Phillip Faraone/Getty Images)

デジタル・マーケティング・エージェンシー「ソーシャル・ドライバー社」を創業したトーマス・サンチェスさん。起業家になる情熱は、幼少期にミズーリ州の農場から始まったと言います。現在は、国内で最も急成長するデジタルエージェンシーの1社を率いるほか、ワシントン市長室の顧問も務め、危機に陥った若いLGBTIを援助し自殺を予防するトレバープロジェクトの理事も務めています。「ソーシャル・ドライバー社は、LGBT+インクルージョンが負担ではなく利益であると示しています」。サンチェスさんはこう述べます。「インクルージョンはビジネスにとって有効なのです」

彼は、従業員が安心して自分を表現できる環境をつくるよう仲間の起業家にアドバイスもしています。そのような環境が「才能豊かで情熱的な人材を我々の会社に引き寄せることにつながっています」とサンチェスさんは言います。

経営者のブライアン・ケリーさん

ニューヨークで旅行業界のリーダーを対象とした2019年の授賞式に出席するブライアン・ケリーさん (© Mike Pont/Getty Images)

ニューヨークで旅行業界のリーダーを対象とした2019年の授賞式に出席するブライアン・ケリーさん (© Mike Pont/Getty Images)

10年前、ポイントやマイルを使って休暇の予約をする人々を支援するブログを始めたブライアン・ケリーさん。旅行好きが転じて職業となりました。現在は従業員100人以上を擁し、ロイヤルティプログラム、クレジットカード、旅行に関する有力な情報源となったトラベルプラットフォーム「ザ・ポインツ・ガイ(The Points Guy)」を運営しています。

会社の規模に関わらず、恩返しすることが常に同社の存在意義とケリーさんは言います。だからこそ彼は、ノーベル平和賞受賞者と若い活動家をつなぐ「ピースジャム(PeaceJam)」や、国家による暴力に直面するLGBTIに緊急の旅行を提供して援助する「レインボー・レイルロード(Rainbow Railroad)」を支援しています。

企業役員のロイ・ハントさん

ロイ・ハントさん (© Gap Inc.)

ロイ・ハントさん (© Gap Inc.)

ロイ・ハントさんは、早くからディズニー・ストアで働く機会を得ました。彼は22人目の従業員として採用され、同社が世界中で600店以上の店舗をオープンさせる事業に鋭意取り組みました。その後、米国のアパレル小売企業ギャップ社に入社。現在は上級副社長として、同社のLGBTI従業員リソースグループのスポンサーを務めるほか、世界中でパートナーシップを構築し、同社の全てのブランドと流通ルートをリードしています。ハントさんは、会社の顧客や同僚への献身を通じて、人と人との架け橋を築いていると話します。

LGBTIの擁護者サブリナ・ケントさん

サブリナ・ケントさん (© NGLCC)

サブリナ・ケントさん (© NGLCC)

2015年にロリンズ・カレッジを卒業したサブリナ・ケントさんは、全米LGBT商工会議所に入り、すぐに上級副会頭の地位に上り詰めました。彼女は、米国内および海外でLGBTIの人々が所有するビジネスを推奨しています。「LGBTQ+の擁護活動が、私の職業経歴でこれほど重要な位置を占めるようになるとは思いませんでした」とケントさんは言います。

ケントさんは、LGBTIコミュニティ内外の若い専門家に、自分自身をケアする重要性を認識するようアドバイスしています。「魂に栄養を与え、心を養い、情熱を追求することで、世界が暗く感じる日があっても、持ちこたえることができます」

テクノロジーの達人アリン・L・ショウさん

アリン・ショウ さん (© RTS)

アリン・ショウ さん (© RTS)

アリン・L・ショウさんは自身のキャリアを、障壁を打ち破ることに捧げてきました。彼は、世界中で黒人ビジネスリーダーの育成を目的とした会員組織、ブラック・エグゼクティブ・リーダーシップ・カウンシルを立ち上げた黒人エグゼクティブの1人です。

ショウさんは、エンジニアリングから建築に至るチームを率いており、銀行、テクノロジー、テレコミュニケーションなどの業界で働いてきました。現在は、ニューヨークを拠点とし、企業や地域社会がより責任を持って廃棄物を管理できるよう支援するリサイクル・トラック・システムズ社の社長兼最高技術責任者です。

企業役員のクラウディア・ブラインドウッディさん

クラウディア・ブラインドウッディさん (© IBM)

クラウディア・ブラインドウッディさん (© IBM)

クラウディア・ブラインドウッディさんは、ハイテク企業IBMのマネージング・ディレクターです。弁護士、企業役員、作家としての経歴を持つ彼女は、職場におけるLGBTIの多様性に関して講演も行い、専門知識を提供しています。ブラインドウッディさんは米国人ですが、イギリスに在住し、世界中の職場でLGBTIの生活向上を目指す国際的な組織「ワークプレイス・プライド」で諮問委員会のメンバーを務めています。

企業役員のスーザン・サンティアゴさん

カリフォルニア州で行われた2016年ミルケン・インスティチュート・グローバル・カンファレンスで講演するスーザン・サンティアゴさん (© Alberto E. Rodriguez/Getty Images)

カリフォルニア州で行われた2016年ミルケン・インスティチュート・グローバル・カンファレンスで講演するスーザン・サンティアゴさん (© Alberto E. Rodriguez/Getty Images)

経験豊富な顧客サービスのプロであるスーザン・サンティアゴさんは、ホテルチェーンのハイアットコーポレーションで上級副社長を務め、同社のグローバル・インクルージョン&ダイバーシティ・カウンシルのメンバーを務めています。

サンティアゴさんは、米国で最も成功し影響力のあるラテン系アメリカ人女性専門家の1人として頻繁に名前が挙がっており、全国の雑誌や団体からも高い評価を受けています。最近では、全米ラテン系専門家協会から、ビジネス界で最もパワフルなラテン系アメリカ人女性50人の1人に選ばれました。

政策担当責任者のミーガン・スミスさん

カリフォルニア州で開催された2019年メーカーズ・カンファレンスで講演するミーガン・スミスさん (© Vivien Killilea/Getty Images)

カリフォルニア州で開催された2019年メーカーズ・カンファレンスで講演するミーガン・スミスさん (© Vivien Killilea/Getty Images)

ミーガン・スミスさんは、人工知能から経済成長に至るまでのあらゆる分野で、新興企業、テクノロジー最大手、米国政府で仕事をしてきました。スミスさんはキャリア初期に、LGBTIの有力なオンラインコミュニティ「プラネットアウト・コーポレーション」の最高執行責任者になりました。その後、グーグル社の副社長を経て連邦政府に入り、ホワイトハウスの最高技術責任者として活躍。オバマ大統領のアドバイザーも務めました。彼女は、STEM(科学、技術、工学、数学)分野への幅広い参加を提唱しています。

スミスさん自身も起業家です。現在は、世界中の企業や組織と多様で非従来型のテクノロジーの才能を結びつけることを目的として設立されたプラットフォーム「シフトセブン(Shift7)」を率いています。

バナーイメージ:デジタル・イノベーション・エージェンシー「ソーシャル・ドライバー社」を創業したトーマス・サンチェスさん。2014年、ワシントンでグーグルグラスの実演を行う (© Nicholas Kamm/AFP/Getty Images)