4年ごとに行われる夏季オリンピック。各国のトップアスリートが競うこの大会に、世界の注目が集まります。今回は新型コロナウイルス感染症の流行により5年待ちとなりましたが、アメリカの選手たちは準備万端です。
22歳のジュボーン・ハリソン(写真上)は、1912年のジム・ソープ以来、男子走り幅跳びと走り高跳びの両方に出場します。体操や競泳などの主要競技から、サーフィン、スケートボード、スポーツクライミングといった新種目まで、東京大会で注目すべきアメリカ人選手を紹介します。
シモーネ・バイルズ
バイルズ(24歳)は、史上最も多くのメダルを獲得した体操選手です。オリンピックでは、これまで金メダルを4度獲得していますし、東京でさらにメダルを獲得する可能性も濃厚です。彼女が跳馬で見せる最新技術「屈伸ユルチェンコ2回宙返り」は、非常に困難で危険な跳躍のため、他の女性が挑戦したことはありません。
バイルズはテキサス出身。競技場の外では、ハリケーン被災者を支援する食料配給センターでボランティア活動を行うだけでなく、男女間の不平等、人種差別、女性体操選手への虐待など、社会的正義の問題についても定期的に発言しています。元里子である彼女は、祖父母に養子に出されるまでの里親制度の体験を語っており、最近では非営利のオンライン大学「ユニバーシティ・オブ・ザ・ピープル(University of the People)」に通う里子を支援する奨学金制度を発表しました。
カリッサ・ムーア
ハワイ・ホノルル出身で4度の世界チャンピオンに輝いたサーファーのカリッサ・ムーア(28歳)は、2014年にサーフィン界の殿堂入りを果たしました。5歳の時に父親からサーフィンを教わったムーアは、アマチュアとして11の全米タイトルを獲得し、2010年にプロに転向しました。また、プナホウ・ハイスクール(オバマ大統領も通った学校)ではスター的な生徒で、夫とはこの学校で出会いました。
ムーアは環境問題や健康問題について意見を述べています。また、自由時間には、少女や若い女性が強い自尊心を持てるようにと、父親と一緒に設立した「ムーア・アロハ・プログラム(Moore Aloha program)」で指導にも携わっています。
ジョーダン・ウィンドル
カンボジアのシアヌークビルで生まれたジョーダン・ウィンドル(22歳)は、1歳の時に両親を失い、プノンペンの孤児院に預けられました。翌年、アメリカ人のジェリー・ウィンドルの養子となり、フロリダで育てられます。7歳の時に参加したサマーキャンプで、プロのコーチにダイビングの能力を見出されました。その2年後には初めて全米タイトルを獲得し、オリンピックの飛込競技で4度の優勝を果たしたグレッグ・ローガニスにちなんで「リトル・ローガニス」というニックネームを得ます。ウィンドルはさらに多くのタイトルを獲得し、テキサス大学では2度の全米大学スポーツ協会(NCAA)チャンピオンになりました。
2回の失敗を経て、2021年にはオリンピックチームの座を獲得しました。メダル獲得が確実視されているわけではありませんが、アメリカとカンボジアにはウィンドルのファンがたくさんいます。特に2016年にプノンペンの孤児のために現地でダイビングのエキシビションを行ったことで、彼のファンが増えました。
キーラ・コンディ
キーラ・コンディは11歳でミネソタ州セントポールのクライミングチームに参加しましたが、長引く背中の痛みのために医師の診察を受けました。そしてX線検査の結果、重度の脊柱側弯症であることが判明したのです。矯正手術を受け、身長が7.5cmほど伸びましたが、医師からは「もうクライミングはできない」と告げられました。それでも彼女は、数カ月間でそうではないことを証明したのです。スポーツクライミングアメリカ代表チームのコーチ陣と練習するため、コンディは2019年にソルトレークシティに移り、世界最高のスポーツクライマーの一人となりました。その後、東京オリンピックの出場権を獲得した最初のアメリカ人女性の一人となりました。
コンディは、インターネットテレビ局オリンピック・チャンネルの「インスパイア―ド・バイ・スポーツ(Inspired by Sport)」シリーズの一環として、難民女性と一緒に自然の造形物を登りました。現在もこのシリーズの主催者とのやりとりを続けており、将来は同様の実地講座を開催したいと考えています。
ケーレブ・ドレッセル
自由形とバタフライの競泳選手、ケーレブ・ドレッセル(24歳)は、オリンピックで2度、世界選手権で13度の優勝経験があり、短距離を得意としています。フロリダ出身のドレッセルは、2つの世界記録(100メートルバタフライ、50メートル自由形)保持者です。東京大会では少なくとも7つのレースで他国の脅威となるでしょう。マイケル・フェルプスを指導した水泳コーチのボブ・ボウマンは、ドレッセルの地力は際立っていると話します。
ドレッセルは自身の向上に熱中しており、指導する若い子どもたちには「みんながお互いに何かを学び合えば、その日は成功だ」と話しています。「水泳では、8歳の子どもが私より上手にやっていることもあるのです。本当にそう信じています」。ドレッセルは、国際水泳連盟水中スポーツワールド誌(FINA Aquatics World)にこう述べています。
ナイジャ・ヒューストン
プロスケートボーダー、ナイジャ・ヒューストン(26歳)は、このスポーツで5度の世界チャンピオンに輝きました。世界で最も稼ぐスケートボーダーでもあります。スケートボード界の「レブロン・ジェームズ」(アメリカのプロバスケットボール選手で高額所得者)とも称されるヒューストンは、常に新しいスケート技を考案しており、レールや階段がお気に入りのスケート場所だと話します。
カリフォルニア州デービスで生まれたヒューストンは、幼少期の一時期を水道が常にあるとは限らないプエルトリコで過ごしました。そこで2009年に、母親のケルと共同で非営利団体「レット・イット・フロー基金(Let It Flow Foundation)」を設立し、脆弱な地域に安全で持続可能な水を提供する活動を行っています。トニー・ホークをはじめとする他のスケートボード界の著名人の協力を得て、ヒューストンの基金はエチオピアの農村(最初は2015年、デブラ・バーハンの村で設置)やハイチで水道設備の建設と修理を行いました。
ダリラ・ムハンマドとシドニー・マクラフリン
陸上競技のダリラ・ムハンマド(31歳)とシドニー・マクラフリン(21歳)は、東京大会400メートルハードルの優勝候補筆頭に挙げられています。ニューヨーク出身のムハンマドは、2019年世界選手権で52秒16の世界記録で金メダルを獲得しました。また、2016年のリオデジャネイロ・オリンピックの金メダリストでもあります。マクラフリンはニュージャージー州出身、現在の世界記録保持者です。今年の6月27日に、全米オリンピック代表選考会で出した51秒90です。
ムハンマドは2月に新型コロナウイルス感染症に罹患しましたが、オリンピック選考会に間に合うように調子を取り戻しました。今は競技後のキャリアについて考えていると述べています。一方マクラフリンは、1972年以来となるアメリカ陸上競技の最年少オリンピック選手としてハードル競技に取り組んでいます。
ケイティ・レデッキー
24歳のケイティ・レデッキーは、オリンピックで5個の金メダル、世界選手権で15個の金メダルを獲得し、女子競泳選手としては史上最多となりました。これまでに14回世界記録を更新しています(多くはさまざまな距離の自由形での記録)。レデッキーはこの6月にスタンフォード大学を卒業し、心理学の学士号を取得しました。東京大会では5つの金メダル(4つの個人種目と4×200m自由形リレー)を獲得するチャンスがあります。
メリーランド州ベセスダ出身の彼女は、オリンピックの元チームメイト、フェルプスから「現代で最も偉大な女性スイマー」と評されています。
彼女自身も、15歳でオリンピック出場を決めたケイティ・グライムスのような若手の選手を女子水泳の「未来」として挙げています。レデッキーは自由時間の多くを慈善活動に費やしており、カトリック・チャリティーズ(Catholic Charities)やシェパーズ・テーブル(Shepherd's Table)、ウォルター・リード米軍医療センターのバイクス・フォー・ザ・ワールド(Bikes for the World)および戦傷兵プロジェクト(Wounded Warriors)を支援しています。
アデリン・マリア・グレイ
アデリン・マリア・グレイ(30歳)は2016年のオリンピック代表で、男女を問わずアメリカ人レスラーとして初めて世界選手権で5つのタイトルを獲得しました。父の勧めで6歳からレスリングを始めて以来、スポーツが彼女の人生を形成してきましたが、東京オリンピックを最後の大会にすると決めています。その後は、米陸軍のレンジャーである夫と暮らすコロラド州に戻る予定です。
男子を相手にレスリングをして育ったグレイ。女子レスリングがオリンピック種目となり感激し、「オリンピックで女子格闘技が採用され、スポーツ界における女性のあり方が変わりました。女性らしいスポーツをすることに縛られる必要がないと示されたのです」と、NBCに述べています。5月にグアテマラシティで開催されたパンアメリカンレスリング選手権では4戦全勝で優勝し、東京大会へ向けて幸先の良いスタートを切りました。グレイは「日本の女性選手がトレーニングにもたらすハッピーなエネルギーと、マット外での友情」が大好きだと話します。
バナーイメージ:オレゴン州ユージーンで行われた陸上の代表選考会で走り幅跳びをするジュボーン・ハリソン。2021年6月27日 (© Charlie Riedel/AP Images)
*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。
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