長谷川舞 在日米国大使館 報道室インターン

1年間延期された東京オリンピックがいよいよ開催されます。世界中の多くのアスリートが、この人気の高い国際スポーツイベントに向けて直前までトレーニングに励んでいます。國米櫻は、空手の「形」でチームUSAの代表に選ばれた日系米国人です。現在は女性形の世界ランキング6位で、東京オリンピックでは金メダルを目指します。今回のオンラインインタビューでは、日系米国人選手としての自身の成長や、米国と日本における練習環境の違い、そして来るべき東京大会への思いを聞きました。

日系米国人アスリートとしての成長

國米はハワイで生まれました。幼少期に米国と日本を行き来していた彼女は、日本の大学に進学すると決意します。その決め手は、両親の出身地であり今でも強い家族のつながりを持つ日本の空手文化でした。育った米国を離れ、新たな環境でトレーニングを行い、自分自身に挑戦すると決心しました。

東京大会では、空手が初めて正式種目として採用されます。米国では空手は一般的にプロスポーツとは考えられていないため、國米は空手に加えて学業にも力を入れる必要がありました。そして、レベルの高い教育に加えて一流の空手トレーニングを受けるには、日本が最適だと判断したのです。

「確かに大変でしたが、日本への留学は、自分のこれまでの決断で最高の選択だったと思います」と國米は話します。「日本での空手は、米国でのバスケットボールやフットボールのようなものです。日本では間違いなく最高の教育を受け、最高レベルの練習ができると思ったのです」

日本の高校卒業後に同志社大学に進学した國米は、そこで多くの人間関係を築き、空手の練習に励み、現在の自身を形成しました。「空手が生まれた国で練習できたことは、間違いなくこれまでで最高の経験でした」。彼女はこう述べています。

日本ではアスリートとして成長し続け、2012年世界選手権で3位、2013年のワールドコンバットゲームズで3位など、多くの大会で上位入賞を果たします。オリンピック出場の夢を追い求めてロサンゼルスに移った後には、2019年パンアメリカン競技大会で1位となります。

同志社大学4回生の國米櫻(右下)。全日本大学空手道選手権大会(東京・武道館)で女子団体形の部2位を獲得

同志社大学4回生の國米櫻(右下)。全日本大学空手道選手権大会(東京・武道館)で女子団体形の部2位を獲得

なぜ空手なのか?

幼少期の國米は運動神経が良く、水泳やサッカー、テニスなど幅広いスポーツをこなしました。では、なぜ空手に集中することになったのでしょう?

「空手が好きな理由は、毎日取り組めるスポーツだからです」と國米。「誰が一番速く走れるか、誰が一番重いウェイトを持ち上げられるか、というものではありません。空手は真に自分自身に働きかけ、日々鍛錬するものです。ベストを尽くすという武道の考え方と、全力で努力するという文化のおかげで、私はこのスポーツに惚れ込んだのだと思います」

高校から大学にかけて國米は、日本の伝統的な「部活」や「体育会」という環境に身を置きました。そこでの空手を取り巻く文化は、米国のそれとは大きく異なると説明します。日本では、大会参加のための補助や大学の奨学金、就職支援などを受ける機会があります。日本ではスポーツとして捉えられている空手ですが、米国ではそうではありません。米国の空手家は、学業とスポーツのバランスという点で非常に厳しい状況に置かれています。

それでも國米は、スポーツに対する情熱は変わらないと感じています。「米国の人々は空手を愛し、好きだからという理由でやっています。私が米国でトレーニングをしているときは、いつもスポーツを愛する人たちに囲まれています。彼らは無理強いされているのではなく、大好きだからやっているのです。さまざまな年齢層のあらゆる人たちが空手を練習しています。間違いなく楽しい世界です」

Credit: Martin Kremser/USA Karate

オリンピック

「2020年東京オリンピックは、私がこれまで出場してきたどの大会とも比較できないものです」。國米はそう言って満面の笑みを浮かべます。過去に日本を訪れた際には、いつも「素晴らしい時間」を過ごせたといいます。日本語という言葉や文化経験から、くつろいで過ごすことができるのでしょう。

東京オリンピックが延期されると最初に聞いたとき、國米の頭の中にはさまざまな感情がよぎったそうです。「練習する場所や練習相手を探し、ゼロから始めるのは大変でした。確かに挫折感を味わいましたが、私たちはアスリートとして、立ちはだかるどんな困難からも立ち直るよう訓練されています。ですから、前向きに捉えました」

新型コロナウイルス感染症が大流行する以前は、2~3週間に一度のペースでさまざまな国を訪れて競技をしていたという國米。「同じ場所にずっと留まる必要があり、次のイベントがいつ行われるか分からないというのは苦しいことでした。アスリートとして、特定の時期にピークに達するよう訓練されているので、その目標がなくなると、トレーニングが困難になります」とも話します。

そんな時、國米とチームメートはお互いを頼りにしました。ワクチンの迅速な配布のおかげで、米国はようやく通常の状態に戻りつつあります。最近では、全米に散らばるチームメートをカリフォルニアに招いて、一緒に週末のトレーニングを行いました。「一人で練習することが多かったので、久しぶりに空手仲間と一緒に過ごすことができました。大事なトレーニングですが、一緒に練習する人が周りにいると充実したものになります」

インタビュー中に國米が何度も口にしたのは「感謝の気持ち」です。日本と米国の人たちのサポートがなければ、今の自分はなかっただろうと言います。インタビューをしていて感じたのは、彼女は肉体的に強いだけでなく、周囲を温かい気持ちにする優しい心の持ち主であるということです。國米はオリンピックでの活躍を通じて、日米両国のファンに間違いなく感動を与えてくれることでしょう。

國米櫻(右)にオンラインインタビューを行う著者の長谷川舞(左)

國米櫻(右)にオンラインインタビューを行う著者の長谷川舞(左)