マーク・トレイナー

アメリカの大統領といえども、執務から少々離れる時間は必要です。ただ、その休暇は、一般のアメリカ人とはだいぶ異なります。

大統領とその家族は、エアフォースワンで休暇先に向かいますが、仕事から完全に逃れることはできません。同行するスタッフも同様です。現代の大統領は、シークレットサービスのエージェント、軍事顧問、コミュニケーションスタッフ、記者やカメラマンのグループなど、約200人を引き連れて移動するのです。

ナンシー・レーガン元大統領夫人はかつて、このように述べています。「大統領に休暇などありません。単に仕事の場所が変わるだけです」

大統領は休暇中でも、国家安全保障に関するブリーフィングを受け、記者会見を開き、世界の首脳陣と連絡を取り合っています。景色の良さ以外は、ほとんどの点で日常の仕事と変わりありません。

レーガン大統領とナンシー夫人。1982年、カリフォルニア州サンタバーバラ近郊の牧場にて (© The White House/AP)

レーガン大統領とナンシー夫人。1982年、カリフォルニア州サンタバーバラ近郊の牧場にて (© The White House/AP)

『Kennedy & Reagan: Why Their Legacies Endure』(未邦訳:ケネディとレーガン―名声が衰えない理由)の著者であるスコット・ファリスは、「大統領が数時間ほど純粋にリラックスできれば幸運」だと話します。「何か重要な決断を求められることなく、丸一日過ごせることは極めてまれなことです」

実際に、大統領の職務というものを明確に示す機会は、最高司令官の休暇中に訪れています。1940年、フランクリン・ルーズベルトは10日間の釣り旅行中に、アメリカが第2次世界大戦に参戦する前に、ナチスと戦う資金を英国に提供する計画を作り上げました。ロナルド・レーガンは、カリフォルニアの牧場から、大幅減税と連邦予算削減に関する法案に署名しています。

8月2日、デラウェア州レホボスビーチを訪れたバイデン大統領とジル夫人 (© Manuel Balce Ceneta/AP)

8月2日、デラウェア州レホボスビーチを訪れたバイデン大統領とジル夫人 (© Manuel Balce Ceneta/AP)

休暇先はホワイトハウス執務室の主とともに変わります。レーガン大統領とジョージ・W・ブッシュ大統領のお気に入りは、自身が所有する牧場での休暇でした。オバマ大統領とクリントン大統領は、夏の休暇でマサチューセッツ州のマーサズ・ヴィニヤードを好んで訪れました。ファリスによれば、この島が人気である理由のひとつは、シークレットサービスが島の大部分を警備できるため、ファーストファミリーが他の場所では味わえないような解放感を得られるからだといいます。

トランプ大統領は通常、フロリダとニュージャージーの私邸で休暇を過ごし、ゴルフを楽しみました。バイデン大統領と家族は、デラウェア州レホボスビーチにある自宅に滞在し、海辺を訪れたりサイクリングを楽しんだりします。

ファリスはこう話します。「ホワイトハウスでのプレッシャーを考えると、大統領にはちょっとしたレクリエーションが与えられてしかるべきです」

ハワイでゴルフを楽しむオバマ大統領。2013年 (© Carolyn Kaster/AP)

ハワイでゴルフを楽しむオバマ大統領。2013年 (© Carolyn Kaster/AP)

バナーイメージ:テキサス州クロフォードの牧場で、ピックアップトラックを運転するブッシュ大統領。大統領はここで、「心を整理することができ、すべてを前向きに考えることができる」と語った。2002年8月9日 (AP Photo/The White House, Eric Draper)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。