アメリカ航空宇宙局(NASA)のエンジニアたちは、火星探査車に名前を付ける際、どこに行けばクリエーティブな名前に出会えるかを知っています。それは子どもたちです。

2月に火星に到着した探査車の名前の公募には、幼稚園児から高校3年生までの総勢2万8000人以上の子どもたちが応募しました。第1位に輝いた名前は「パーシビアランス」。命名者は、バージニア州の中学生アレクザンダー・マザーさんです。

火星から地球に画像を送信する仕事を開始したパーシビアランスですが、その本体には命名コンテストの準決勝まで残った他の155の名前も小さく彫り込まれ、パーシビアランスと共に火星で活躍しています。

火星探査車命名コンテストは、科学・技術・工学・数学(STEM)分野への子どもたちの関心を高めています。ブライデンスタインNASA長官(当時)は2019年、命名コンテストは子どもたちにとって、「火星の表面から重要な試料を収集する探査車の仕事に関わり、地球にいる科学者の研究を支える素晴らしい機会となる」と述べました。

パーシビアランスはツイッターのアカウントを持ち、趣味は「写真、岩石収集、オフロードレース」と自己紹介していまが、パーシビアランスの最初の投稿よりもずっと前から火星探査車に個性を与えていたのは子どもたちなのです。

ソジャーナ(1996年打ち上げ)

(Photos: © Thomas Kienzle; © Doug Mills/AP Images | Illustration: State Dept./D. Thompson)

(Photos: © Thomas Kienzle; © Doug Mills/AP Images | Illustration: State Dept./D. Thompson)

「火星の真実を見つける旅の途中にある」―― バレリー・アンブロワーズ(12歳)

コネティカット州ブリッジポートに住むバレリー・アンブロワーズさんが火星探査車に「ソジャーナ」と命名したのは、12歳の時でした。

ソジャーナは「旅行者」と言う意味ですが、アンブロワーズさんは「ソジャーナ・トゥルース」とはっきりと命名しました。ソジャーナ・トゥルースは、南北戦争時に奴隷制度廃止と女性権利を訴えたアフリカ系の人権活動家です。

アンブロワーズさんは当時、「ソジャーナ・トゥルースは火星の真実を見つける旅に出ていることから、この名前が一番ふさわしいと思いました」と説明し、火星の過酷な状況に耐えるには、強さが必要だからと語りました。

そして、かつて奴隷であった奴隷解放活動家のソジャーナ・トゥルースを、「幾多の過酷な状況を」乗り越えてきた人物と表しました。

スピリットとオポチュニティ(2003年打ち上げ)

(Photos: © Manuel Balce Ceneta; © Peter Cosgrove/AP Images | Illustration: State Dept./D. Thompson)

(Photos: © Manuel Balce Ceneta; © Peter Cosgrove/AP Images | Illustration: State Dept./D. Thompson)

「夜に満天の星空を見上げ、空を飛ぶことを夢見ていた」―― ソフィ・コリス(9歳)

アリゾナ州スコッツデールのソフィ・コリスさんは小学3年生の時に、双子の火星探査車に「スピリットとオポチュニティ」と命名しました。

シベリアに生まれ、アメリカに養子として渡ってきたソフィさんは、強い心(スピリット)を持った女の子で、自分に与えられた機会(オポチュニティ)に感謝していました。NASAへの応募用紙に、「私はかつて養護施設にいました。そこは暗くて、寒くて、寂しいところでしたが、夜に満天の星空を見上げると安心し、空を飛ぶことを夢見ていました。アメリカで私は全ての夢を叶えることができます」と書きました。

キュリオシティ(2011年打ち上げ)

(Photos: NASA; © Dutch Slager/AP Images | Illustration: State Dept./D. Thompson)

(Photos: NASA; © Dutch Slager/AP Images | Illustration: State Dept./D. Thompson)

「質問をし、疑問に思う。そうしないければならない気持ちとともに人は探検家へとなってきた」―― クララ・マ(12歳)

ミズーリ州カンザスシティ地域に住むクララ・マさんは、小学6年生の時に火星探査車「キュリオシティ」の名付け親となりました。NASAの応募用紙の中で命名の由来を「キュリオシティ(好奇心)とは、日常生活を通して私たちを突き動かす情熱」と書きました。

マさんは自分で認めるほどの「恥ずかしがりや」であったため、この名前は興味を惹かれます。彼女は、命名コンテストで優勝したことは自分を変えたと言い、「自分の意見をはっきりと言わなかったら、私の人生は(現在と)同じものでなかったはず」と述べました。

命名コンテストの応募用紙に「人は質問をし、疑問に思う。そうしなければならない気持ちとともに探検家や科学者になってきた」と書いた少女はその後、エール大学で地球物理学を専攻。卒業後はイギリスのケンブリッジ大学に進学し、環境政策学の修士号を取得しました。そして、「ロボットを他の惑星に送ることを考えると、地球上の生命がいかに特別で、もろいものであるかがわかるようになりました。地球について学ぶことは、私ができる一番大切なことだと気づきました」と語っています。

パーシビアランス(2020年打ち上げ)

(Photos: NASA/Aubrey Gemignani, NASA | Illustration: State Dept./D. Thompson)

(Photos: NASA/Aubrey Gemignani, NASA | Illustration: State Dept./D. Thompson)

「火星に到達するまで多くの困難に直面するでしょう。しかし、私たちは耐えることができます」―― アレックス・マザー(13歳)

首都ワシントン郊外のバージニア州に住むアレックス・マザーさんが火星探査車に「パーシビアランス」と命名したのは中学1年生の時でした。歴代の火星探査車の名前に続くものを付けたいと思っていました。

NASAへの応募用紙には、「歴代の火星探査車の名前に共通しているのは、私たち人間に備わっている資質です。しかし、一番大切な資質が入っていませんでした。パーシビアランス(忍耐)です。火星に到達するまでには多くの困難があるはずです。しかし、私たちはそれに耐えることができます」と書きました。

アレックスさんが宇宙探査に関心を持つようになったのは、11歳の誕生日に参加した宇宙キャンプでサターン型ロケットの模型を見たことがきっかけだったと言います。「宇宙について、自分が生涯何らかの形で携わっていくものだと直感的に感じました。私の夢は、火星探査計画のリーダーになることです」