宇田川サーシャ 在日米国大使館 英語編集者

 高校卒業後の進路について、15歳ではっきりした考えを持つのは難しいかもしれません。親には、子どもは大学に行くものという先入観があるかもしれませんが、親の考えと、本人が心に描く数年後の未来が必ずしも一致するわけではありません。私にもインターナショナル・スクールの9年生(日本の高校1年生に相当)の娘がいるので、時々これからの娘の教育について考えてしまいます。娘には、私がアメリカの大学で受けたような、思考力を刺激される教育を受ける機会を可能な限り与えたいと思っています。ですから、秋葉原でアメリカ留学フェア「America EXPO 2013」が開かれると知り、まだ少し早いかもしれないけれども、娘にアメリカの大学について考え始めてもらおうと、彼女を連れて行くことにしました。正直に言えば、会場にいるのは若い人たちばかりで、私は場違いかもしれないと少し心配していました。

 フェアの会場では、生徒やその保護者だけでなく学校の先生たちも大学の代表者やイベントスタッフと話しており、溢れんばかりの人だかりでした。参加していたのは、アイビーリーグ、州立大学、コミュニティー・カレッジなどアメリカの大学60校です。イベントスタッフはカラフルなTシャツを着て、「留学コンシェルジュ」として生徒や保護者が必要な情報を得るお手伝いをしていました。願書の出し方、学資援助、コミュニティー・カレッジ、高校のカリキュラムについてのセミナーも開催されていました。

expo200px1 expo200px4 expo200px5 expo200px6

フェアに参加できなかった人たちにも会場の様子がわかるように、多くのセミナーがUstreamでライブ中継されました。

最初にアメリカ大使館のカート・トン臨時代理大使から開会のあいさつがありました。あいさつでトン臨時代理大使はプリンストン大学での自分の経験や、東京、台北、北京に留学したときのことについて触れ、「そうした体験が私の目を開き、世界を見る目が変わりました。あの若いころの体験がなければ、私は今ここに立っていないと思います」と語りました。また、日本では最近、若者を「グローバル市民」に育てることに力を入れている、といった話もしました。

america expo photoamerica expo photo

トン臨時代理大使のあいさつが終わると、サプライズ・ゲストがステージに。人気お笑い芸人のパックンこと、パトリック・ハーランさんです! 初めはカレッジ・フェアに行くことにあまり乗り気でなかった娘も、パックンを見て目を輝かせました。巧みな話術で、あっという間にその場にいた人たちをなごませたパックンは、聴衆と一緒にじゃんけんゲームをしながら、どのような人でもアメリカ留学から何か得るものがあるというメッセージを伝えました。

パックンのスピーチはただ楽しいだけではありませんでした。ハーバード大学での勉強や東京工業大学で講師として働いている経験についても話してくれました。勉強熱心でまじめな日本の学生がアメリカ人からオリジナリティやクリエーティブな側面を学べば、両方の良いところを組み合わせことができ、間違いなくグローバル市民になれると彼が言ったときには、私も思わずうなずいてしまいました。これこそ、ハーバードで学んだ経験と日本社会への深い理解を結び付けて、パックン自身が成し遂げてきたことであり、そのおかげで日本で芸人として成功できたのです。世界に出て他の文化を学び、海外で学んだことを日本で生まれ育ったバックグラウンドに取り入れてほしい―これが、ふたりの娘に対する私の願いです。

パックンは、留学すること自体が一番大切だと言います。日本を出て初めて、日本の長所、短所、他の国の長所、短所がわかり、いろいろなことが学べる。教室以外で学ぶことも非常に大事だと指摘しました。

そうは言っても、言葉が話せないのに他の国へ行って、そこで大学に通うのはとても勇気がいります。America EXPOに出展した多くの大学ブースには日本人の卒業生がいました。こうした先輩たちと日本語で話ができて、留学を考えている生徒もその保護者もとても安心したようでした。私の娘は英語を話せますし、アメリカの大学に行くことにも興味がありますが、どこで何を学ぶかについてはまだはっきりしません。あまりの情報の多さに娘は圧倒されているようだったので、私たちはブースをいくつか回り、大学の代表と話したり、パンフレットを集めたりしました。驚いたのは、参加していた大学が、教育水準、専門分野、費用の面でとてもバラエティに富んでいたこと。留学するには成績がトップレベルで、裕福な家庭に育ち、とても積極的で、英語もペラペラでないとだめ、と多くの人たちは思っているかもしれませんが、America EXPOへ行ってみると、誰でも留学できることがわかります。

my dream project

「私の夢フォトプロジェクト」のポスター。皆さんの夢がニコニコ動画とフェイスブックで公開されました

帰り道、どの大学がよさそうだったか、どんなことを勉強したいかを娘に聞いてみました。娘はぽかんとした表情で私を見つめ、話題を変えてしまいました。大学のことを考えるのは娘には早すぎたのでしょう。でもその晩、娘は大学のパンフレットをパラパラとめくり、妹に見せたりしていました。高校卒業後の進路を彼女が決めるまでには、まだたくさんのことを学び、自分をしっかり見つめないといけないでしょう。しかし、今回の経験で、私も娘も考える材料ができましたし、娘は少しだけアメリカの大学に行くことを積極的に考えるようになったと思います。


America EXPO 2013は、在日米国大使館の主催、EducationUSAの共催、日米教育委員会(フルブライト・ジャパン)、国際教育交流協議会(JAFSA)、アメリカ学部卒業生ネットワーク(USCANJ)、カガクシャネット、日本英語検定協会の協力により、2013年9月20日に秋葉原UDX Gallery & NEXTで開催されたアメリカ留学フェアです。今後のイベントについてはConnectUSAのウェブサイトとフェイスブックでお知らせしますので、今回参加できなかった方はぜひチェックしてみてください。

America Expo 2013