カリフォルニアといえばバーベキュー?!
読者の皆さんはカリフォルニアと聞いて何を思い浮かべるでしょうか? ビーチ、ディズニーランド、ゴールデンゲートブリッジ。そしてエンターテインメントのメッカ、ハリウッドに、スタートアップの聖地、シリコンバレーなどなど。アメリカ大陸の西部に位置し、太平洋に面しているカルフォルニアは、温暖な気候で、海と都市と大自然が共存する「黄金の地」と呼ばれるほど人気の高い州です。今回はそんなカリフォルニアで「サンタマリア・バーベキュー」に出会い、その美味しさに衝撃を受けたという在福岡米国領事館首席領事ジョン・テイラーさんのお話を紹介します。
ジョン・テイラー首席領事
現在、福岡米国領事館で首席領事を務めるジョン・テイラーさん。ボーリングとカラオケが趣味というジョンさんは、SNSを積極的に活用して個性的な日米交流を展開しています。札幌の米国領事館で広報文化担当領事を務めていた際に東日本大震災が発生。被災地へ自らギターを担いで赴き、避難を余儀なくされた住民に気分転換をしてもらおうと復興文化イベントを実施したという、とてもユニークで行動力のある方です。
国務省入省前はアメリカ空軍に勤務していたジョンさん。カリフォルニアにある空軍基地に配属され、そこで出会ったのがサンタマリア・バーベキューです。
サンタマリア・バーベキューは「トモサンカク」?!
「アメリカにはいろんなスタイルの美味しいバーベキューがあります。意外かもしれないけれど、カリフォルニアにも独自の美味しいバーベキューがあるんです」とジョンさん。サンタマリアはカリフォルニア州中部サンタバーバラ郡の都市。そんなサンタマリア発祥とされるバーベキューでまず特徴的なのは、そのバーベキューグリルです。グリルの横に焼き網を上げ下げするハンドルが付いていて、網の高さを変えることで常に適温で調理ができるのです。ジョンさん曰く「直火で焼くのではなく、遠火でスモーク調理するんです」。そしてサンタマリア・バーベキューに使われる代表的な部位が「トライチップ」。友三角(トモサンカク)という和名で、約1トンの牛1頭から2キロ程しか取れないといいますから、とても貴重なのです。味付けは、塩コショウにガーリックパウダーなどのスパイスを擦り込み、バーベキューソースの代わりにサルサソースを付けます。カウボーイが始めたといわれるサンタマリア・バーベキューですが、サルサソースを付ける辺りに、国境を接するメキシコからの移民の影響が垣間見えます。また付け合わせには、ピンキート豆を使った豆料理にサラダ、そしてフランスパンが代表的。薪には当地で多く採れるレッドオークを使い、その香りはトライチップとの相性が抜群なのだそうです。
美味しいバーベキューは路上に?!
ジョンさんがまだ空軍に在籍していた頃のことです。週末になんとなく街中を歩いていると、至るところで美味しそうな匂いが漂い、モクモクと煙が上がっています。出所は、路上で売られているバーベキューでした。今でもその美味しさが忘れられないというジョンさん。「カリフォルニアを訪れる機会があったら、ロサンゼルスにも見所がたくさんあるけれど、少し足を延ばしてサンタマリアにも行って欲しい。是非あの美味しいバーベキューを知って欲しいんです」
アメリカン・バーベキュー=アメリカ?!
「相撲が大好きです」とジョンさん。「長い歴史と伝統によって育まれた日本文化は素晴らしい。そして羨ましい。アメリカは日本と比べて歴史が浅い国です。しかしアメリカにはバーベキューがある。バーベキューにはアメリカが辿った歴史が凝縮されています」と熱く語ってくれました。「アメリカ各地で独自に進化したバーベキューを辿ると、移民の影響やその土地独特の風土を取り入れて発展した歴史が見えてきます。サンタマリア・バーベキューは、カウボーイがつくり出した食文化に、メキシコやフランスなどさまざまな移民の影響がミックスされた、まさに多民族国家アメリカを象徴する料理と言えます。だから私はバーベキューが大好きなんです」
アメリカ人のバーベキューに対する強いこだわり。それはアメリカン・バーベキューの歩みが、アメリカ人の形成の歴史と密接に関わりがあり、食文化を通じてアメリカという国を表現しているからではないか、ジョンさんのお話を伺いながらそんなことを思いました。引き続きアメリカン・バーベキューを通じて、アメリカという国そのものを理解していきたいと思います。
バナーイメージ:福岡の自宅でバーベキューを楽しむジョン・テイラー(写真提供:ジョン・テイラー)
***
シリーズ第1回 アメリカ人外交官とバーベキュー:バレットさんのテキサス・バーベキュー「ブリスケ」編
シリーズ第2回 アメリカ人外交官とバーベキュー:マーガレットさん、トッドさん夫妻の「メンフィス・バーベキュー」編
COMMENTS0
LEAVE A COMMENT
TOP