ジェイソン・ハイランド 在日米国大使館首席公使

私は盆栽が大好きです。伝統芸術の神髄とも言える盆栽が中国から日本に渡来したのは、鎌倉時代までさかのぼります。歴史を学ぶ者として、私が特に盆栽が好きな理由は、それぞれの枝にさまざまな過去の物語が込められていることに加え、時の試練や外部からの影響にさらされて、その未来の姿を何度も予測しなおす作業が行われるからです。

先月、さいたま市に伺った折、大宮盆栽美術館と、加藤さんというご家族が代々営む、世界的にも有名な盆栽園「曼青園」を訪ねました。今回拝見した盆栽のなかでは、岸信介元首相が愛蔵した花梨の盆栽が特に気に入りました。きっと安倍首相も子供の頃ご覧になっていたのではないでしょうか。また、1923年の関東大震災のときに、壊滅的な被害を受けた東京から大宮に多くの盆栽師が移住してきたことから、この町が世界の盆栽芸術の中心になったというお話も伺いました。

Learning how to cultivate bonsai at Mansei-En in Saitama.

蔓青園で盆栽の手入れの仕方を習いました

蔓青園では、樹齢1400年の盆栽を拝見しました。この木は、現在の新潟県にある崖に生えていたものだそうです。また、この由緒正しい盆栽園でアメリカ人として初めて盆栽の修行を終える予定のアダムさんともお会いました。さらに、盆栽の手入れの仕方について手ほどきも受けました。教えてくれた加藤さんの祖父、三郎さんは、ワシントンの米国立樹木園に50鉢の盆栽の標本を寄贈した方です。その功績にちなんで、国立樹木園内の日本盆栽館までの小路は「加藤散策路」と名づけられています。まさに日米友好を象徴するエピソードです。

加藤さんご一家は、数世代にわたってこの盆栽という芸術を継承してこられたわけですが、いかにして自然と調和させながら木を導き、何年もにわたり健やかに育むか、という盆栽の精神についてお話ししてくださいました。またこれまでに、何人かの日本の首相から米国大統領に、国としての公式の贈り物として盆栽が贈呈されたそうです。このような盆栽を見るたびに、それらが最初に植えられた時代、盆栽の元になった木々が育った遠く離れた土地、そして存命中に盆栽をそばに置いて愛でていた著名な人たちの物語を感じ取ろうとします。

今回のさいたま市訪問や、他の盆栽園を訪れときの経験、また私の研究を通して、この最も伝統的な芸術の中にも、日米間の深い絆が絶えることなく続いていることが見てとれ、強く心を打たれました。加藤さんご一家は、三郎さんが米国へとても大きな贈り物をし、その後も美しい盆栽を贈り続け、さらには盆栽という芸術に熱い気持ちを抱く若きアメリカ人を指導してくださるなど、これまで日米友好を支援してくださいました。これは、私がこれまで日本各地を訪れるなかで発見した、最も驚くべき、そして最も有意義な結び付きです。

Bonsai trees at the Ohmichi Garden at the Imperial Palace

皇居の大道庭園にある盆栽

機会があれば、皆さんもワシントンの米国立樹木園の「加藤散策路」を歩きながら盆栽を堪能してみてはいかかでしょう。訪れるのが春ならば、樹木園からナショナルモールを歩いて足を伸ばすと、咲き誇る桜も堪能することができますよ。

Ambassador Kennedy also learned how to plant a bonsai in a workshop she hosted at her residence with students from the Tokyo Metropolitan Horticultural High School. Look at how much fun everyone is having sharing this art across cultures!

ケネディ大使も、公邸で開催された盆栽教室で、都立園芸高校の生徒たちから盆栽作りを学びました。文化の違いを超えて、みんなが盆栽作りを楽しむ様子が伝わってきます