ローレン・モンセン

アメリカの公的保健機関は、COVID-19のデータを提供しています。

その代表格が疾病予防管理センター(CDC)です。データ収集、疾患パターンの変化観察、感染予防のための安全ガイドラインの提供に加え、海外の研究機関とも連携し、新規症例の追跡調査も行っています。

Brazilian and U.S. health workers in Joao Pessoa, the capital of Paraíba state in Brazil, search for mothers and their infants to include in a Zika study. (© Andre Penner/AP Images)

ブラジルのパライバ州。ブラジルとアメリカの保健職員がジカ熱調査の被験者となってくれる母親と乳幼児を探している (© Andre Penner/AP Images)

ニューヨーク州立大学バッファロー校で教鞭をとる感染症とパンデミックの専門家で医師のショーナ・ゾリックさんは、「CDCの基本任務は正確なデータ収集」と話します。

公衆衛生に関する政策は「オープンかつ客観的に得られた最高品質の科学データ」に基づいて決定されます。(ゾリック医師) CDCのデータが高く信用されているのは、厳密かつオープンな手法で収集されているからです。

厳密な手法で収集される健康データ

アメリカのデータは「届出疾患全国サーベイランス(NNDSS)」に基づいて公表されます。これは約120の疾患を公衆衛生の専門家が監視、管理、予防するのを支援するシステムです。

「届出疾患」とは、診断された場合、法律によって政府への報告が義務付けられている病気です。コロナウイルスが原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、そしてCOVID-19の他に、コレラ、腸チフス、マラリアなどが対象です。

サーベイランスを実施するスタッフは、州・準州、首都の保健機関と協力してデータ集計を行います。

CDC workers in suburban Atlanta go door-to-door to test for antibodies in blood, to understand how the coronavirus is spreading. (CDC)

アトランタ郊外。CDC職員がコロナ感染の研究のため各家庭を訪問、血液中の抗体検査を行う (CDC)

CDCによると、毎年推定270万件の症例が医療関係者、研究施設、病院などパートナー機関によって報告されています。

研究者は、法律によって義務付けられているこのような報告から集計された統計を用いて、感染症の発生源の追跡、傾向特定、将来の健康危機予測を行います。

国民に透明性のある情報を提供

CDCは、医師からの診療報告、リスク要因情報、立証済みの研究結果、患者の人口統計に基づいて、疾病緩和戦略を策定します。

COVID-19に関するデータはウェブサイトで常時公表され、衛生専門家、政策決定者、国民など誰もが閲覧することができます。CDCはツイッターフェイスブックに毎日、シンプルでわかりやすい形で最新情報をアップしています。

ゾリック医師は「公衆衛生を教えている者として、正確な公衆衛生情報がどこにあるのかを学生に知ってもらうこと」が役割の一つと語り、「CDCは最も大切な情報源」と言います。

CDCに加え、国立衛生研究所(NIH)、ミネソタ州のメイヨークリニック、オハイオ州のクリーブランドクリニック、メリーランド州のジョンズ・ホプキンス・ヘルス・システムも信頼できる情報源です。

将来を予測するため過去を振り返る

研究者は現在だけでなく過去の感染症からも教訓を得ています。

届出疾患がほぼ終息すると、CDCは感染流行事後報告書を提出しデータ修正を行います。MERSの場合は、流行感染が2014年中頃に落ち着くと、翌2015年1月に最新動向が発表されました。それによると、世界各地で約1000件の症例が確認されたこと(うち2件はアメリカ)や、ほとんどが2014年3~5月の間に発生したことが報告されているほか、「全国規模でサーベイランスを実施し、45州で514人を検査したが国内の追加症例は今のところ報告されていない」と結論付けられています。

バナーイメージ:アトランタにあるCDC本部。食品媒介性感染の研究所でガラス瓶からバクテリアを取り出す微生物研究者のモリー・フリーマン (© David Goldman/AP Images)