「ニュースフロント」は一見、合法的なニュース専門サイトに見えます。しかし実際は、クリミアに拠点を置くプロパガンダ報道機関で、ロシアの諜報機関であるロシア連邦保安庁とつながっています。

ロシア政府は、ウクライナ、民主主義、自由選挙を弱体化させるため、独立系報道機関という仮面をかぶったニュースフロントのようなサイトを作り、偽情報を拡散しています。

ニュースフロントは2015年に設立され、西側の閲覧者に「別の情報源」を提供する使命を担ったサイトと自称しています。「客観的な情報」を10カ国語で発信するとしていますが、実情は異なります。

以下はニュースフロントが主張する偽情報の例です。

  • COVID-19はアメリカ政府が生物兵器として作り出し、ウクライナと中国の国民を使って死に至らしめるウイルスの人体実験を行った。
  • ウクライナは国際通貨機関(IMF)の植民地である。
  • 欧州連合(EU)はウクライナを見捨てた。

精査から見えるロシアとの癒着

2020年、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブは、企業方針に反するとして、ニュースフロントと関連のあるアカウントを削除しました。例えば、フェイスブックは、ニュースフロントが外国機関、つまりロシア政府のため、「組織的な偽装行為」を行い、世論を操作したと指摘しています。

タイム誌も2017年に、ニュースフロントは伝統的な報道基準を順守するふりさえもほとんどしていないと述べ、サイトが主張する独立性に疑問を呈しました。また、西洋評議会デジタル・フォレンジック・リサーチラボ(DFRLab)は、ニュースフロントが画像処理した内容を使っていると指摘しました。

ニュースフロントは、ロシア政府が大量・広範囲に情報を発信する宣伝兵器の一つである

―― 民主主義を確保するための同盟、2021年

国務省は2020年の報告書の中で、ニュースフロントはプーチンのオフィスから直接仕事を受けているという元従業員の証言を取り上げました。

EUは2015年、ニュースフロントといったサイトを通じたロシア政府による偽情報キャンペーンに対抗するため、EUvsDisinfoを立ち上げました。

EUvsDisinfoのウェブサイト

EUvsDisinfoのウェブサイト

一方、財務省は、ニュースフロントをロシア諜報機関の指示を受けたメディアと呼び、2021年4月と2022年3月の2度にわたり、ニュースフロントと同報道機関の幹部職員に制裁を科しました。そして、ニュースフロントはウクライナの不安定化を図り、ロシア政権の活動をもっともらしく正当化しようとするロシアの戦略的な目的を前進させる偽情報を拡散していると非難しました。

ロシアの偽情報発信と情報検閲の動きは、2月のウクライナ侵攻以降、さらに活発化しています。

ロシアの偽情報サイトはニュースフロントだけではありません。今年3月、財務省はウクライナ侵攻を正当化する偽情報を拡散しているとして、11のロシアの諜報機関の指示を受けた偽情報メディアに制裁を加えました。ロシアが拡散している偽情報の代表的なものに、2014年にウクライナを攻撃し領土を占領したが、実際の侵略者はウクライナであり、そこから2月の全面侵攻へとつながったという主張があります。