鈴木実桜 明治大学情報コミュニケーション学部情報コミュニケーション学科(TOMODACHI-Microsoft iLEAP Social Innovation and Leadershipプログラム参加者)

大学に入学して以来、私には「絶対に留学したい」という思いがありました。日本でどれほど英語の勉強をしても、それを話す環境、その言葉が生まれた環境に身を置かなければ身についたとは言えないと思ったからです。しかし、留学にはお金がかかります。家族に負担をかけたくなかった私は、自力で留学したいと考えていたので、費用はとても大きな壁でした。

そのような時に出会ったのが、TOMODACHI-Microsoft iLEAP Social Innovation and Leadershipプログラムでした。このプログラムは短期間の留学でありながら、私の中の3つの思い(とにかく留学したい、誰も自分を知る人がいない環境に身を置きたい、就職前に自分について考えたい)をかなえてくれるものでした。自分にとって得るものが大きいと感じた私は、エントリーすることにしました。

TOMODACHI-Microsoft iLEAP Social Innovation and Leadershipプログラムとは

私が参加したこのプログラムは、約1カ月間ワシントン州シアトルに滞在し、セッションや非営利組織(NPO)でのグループプロジェクトなどを通して、自分のビジョンを構築し、リーダーシップ・スタイルを見出すことを目的としています。自分を知ることで自らを見つめ直し、社会とのつながりを考えることを通し、どうすれば日本社会にインパクトを与えられるかを考えました。レクチャーでは“Who am I?”という問いかけを基本に、自分について振り返ったり、人とのコミュニケーションのとり方について考えました。さらにNPOでは、NPOというビジネス形態について学び、チームでプロジェクトに取り組むことで、社会で自分がどのような貢献をしたいのかを考えました。このようなことを学んだおかげで、社会に惰性で出て行くのではなく、主体性を持って社会に参加できる力がついたと思います。

プログラム修了式

プログラム修了式

シアトルという環境

シアトルの環境は、日本とは異なるものでした。まず、1つの市の中で区分けがされていることです。観光客で賑わう街もあればアートの街もあり、ビジネスの街もある。それは日本も同じです。しかし、その区分けとは別に、歴史を背景にチャイナタウンや日本人街が生まれ、移民のルーツによる住み分けが見られます。また富裕層が住む地域、逆に貧困層が住む地域、さらにはLGBT(性的少数者)の方たちが住む地域というのが明確に分かれていたのがとても印象的でした。

そしてもう1つ大きく異なることは、NPOが根付く環境です。これはシアトルに限ったことではないと思うのですが、NPOが身近にあることで、ソーシャルイノベーションに自分が携わっているという意識が私にも生まれました。私が見たNPOの1つに、レストラン事業を通してホームレスの人々の社会復帰を支援するFarestartという団体がありました。その職員の方が話していたことで印象的だったのは「プログラムを途中でやめてしまった人がいても、その人が戻ってくる日のために私たちは待ち続ける」という言葉でした。私は、ビジネスとして利益を生み出すだけでなく、ビジネスを通して人を変えるという考え方に驚きました。レストランで働きながら、まず自分の生活のために稼ぐ。その中で人と協力することを学ぶ。そして調理の技術を学び、最後には料理人としてレストランで働く。一見するとアルバイトと変わらないように思えるかもしれません。しかし、ホームレスになった人が社会復帰の一歩を踏み出すことは容易ではありません。真の意味で社会復帰してほしいからこそ待てる、その考えに私は感銘を受けました。

このようにシアトルでは、日本にはないビジネスを学ぶことができました。就職活動の前に、自分が社会で何をしたいのか、あらためて考えるきっかけになったと思います。留学先で暮らす中で日本と違うものを探し、それを自分がどう感じるかを考えることで、自分の価値観を身につけられるのも留学の魅力です。

レストランに飾られたFarestartを支援する団体とシェフたちの写真

レストランに飾られたFarestartを支援する団体とシェフたちの写真

何事も自分を知るところから

このプログラムの中で重要なテーマの1つだったのが“Who am I?”です。周りに自分を知る人がいない環境だからこそ、自分について考えることができました。どのような過程を経て今の自分ができたのかと聞かれ、すぐに答えられる人は少ないでしょう。何が契機となり、自分の考えや目標が生まれたのかを振り返ることは、日常の空間では難しいものです。一度立ち止まり、自分を見つめ直す時間をつくれることも、留学の魅力の1つです。目標だけでなく、自分の長所・短所を認識することもできます。そしてそれを他者に伝える勇気も持てます。

自分なりのリーダーシップ

このプログラムのテーマは、もちろん名前にある通りリーダーシップを学ぶことです。皆さんは「リーダーシップ」という言葉を聞いて、どういうものを思い浮かべますか? おそらく、人の前に立ち、目標に向かって導いていく様子をイメージするのではないでしょうか。しかし実はそれだけではありません。チームの成果のために自分に何ができるのかを見極め、力を発揮することがリーダーシップだと私は学びました。だからこそ、自分について知ることが重要です。自分の手持ちのカードを知ることで、戦い方が初めてわかるのです。自分に何ができて、何ができないのかを知ることは、可能性を切り捨てることではないと思います。お互いに補い合い、できることを生かすことがチームワークを高めることにつながり、さらに自身のリーダーシップを発揮することになると私は思います。

修了式の様子

修了式の様子

Pay BackではなくPay Forward

このプログラムを通して学んで得た大切な言葉の1つに“Pay Forward”があります。私がシアトルで得た経験は、どれも周りの人から与えられたものでした。その与えられた経験に対して、私は何かお返しをしなければならない=“Pay Back”しなければならない、と思っていました。しかし、返すことでは、社会の中でこの学びを生かすことはできません。ここで得た学びを次の人に伝えていく=“Pay Forward”することが、社会を変えていくことにつながるのです。

私も、この経験を伝えることで、ソーシャルイノベーションを起こす一人になりたいと思います。短期であろうが長期であろうが、留学で得られることは必ずあります。自分の行動次第です。日常とは違う環境だからこそ、自分を知ることができ、新しい可能性に気づけると私は思います。ぜひ、アメリカ留学に挑戦してみてください。