パンデミックや人種間の敵対意識など、さまざまな問題が起きたこの1年、米国桂冠詩人コンサルタントを務めたジョイ・ハルジョは、詩に心の安らぎと教訓を見出します。

「最も恐ろしい時、自信に満ちている時、悲しみに満ちている時、喜びに満ちている時、そこには必ず詩があります」。米国議会図書館のインタビューでハルジョはこう語りました。「人生を変える詩が常にあります」

マスコギー・クリーク族の一員であるハルジョは、公式に米国の詩人を務める初の米国先住民です。

カーラ・ヘイデン米議会図書館長は、ハルジョを任命する際に次のように述べています。「彼女にとって、詩は『夢、知識、知恵を運ぶもの』。彼女は詩を通し、米国の伝統と喪失、過去の過ちへの審判と神話化の物語を語っているのです」

多くの先住民文化では、詩人は治癒者としても知られているとハルジョは指摘します。先住民族の文化が無視され続けていることへの不満を、彼女は詩で解消しています。「私にとって詩とは、言葉が見つからないときに話す方法なのです」。米国の人種について行われた「ナショナル・ブック・フェスティバル」の討論会で彼女はこう述べました。

自分の伝統を誇りに思い、先住民の権利を擁護する活動の一環として詩を書き始めたとハルジョは言います。

米国先住民のミュージシャンで、詩人でもあるジョイ・ハルジョ。1990年頃 (© Paul Abdoo/MPI/Getty Images)

米国先住民のミュージシャンで、詩人でもあるジョイ・ハルジョ。1990年頃 (© Paul Abdoo/MPI/Getty Images)

彼女にとって重要なのは、米国の先住民は絶滅したわけでなく、今も米国文化に貢献していると人々に知ってもらうことです。桂冠詩人としての彼女の代表的なプロジェクト「Living Nations, Living Words」は、地図上をクリックすると、その地域の先住民詩人について知ることができるインタラクティブなマップサイトです(オクラホマ州タルサをクリックするとハルジョの詩を読むことができます。他にも数十人の詩人が含まれています)。

「私たちはここにいる。私たちは詩人で、ジャズミュージシャンで、教師だ。私たちは人間だ」と、今年70歳になるハルジョは言います。ハルジョ自身も、詩人であると同時に、ミュージシャン、回想録作家であり、さらには曾祖母でもあると誇らしげに語ります。

ハルジョは執筆活動や音楽活動でも受賞歴があります。また、サキソフォンを演奏し歌も歌う「アロー・ダイナミクス」というバンドのメンバーでもあります。世界の詩のほとんどは、音楽を含め口頭伝承の一部だと彼女は指摘します。

ハルジョは、詩に対する自らの情熱を他の人にも伝えたいと考えています。「詩はみんなのもの。大学の棚に置かれているだけではありません」

ブックフェスティバルのイベントに参加したハルジョは、トルコ石のジュエリーを身につけ、漆黒の髪にありえないほど長いビーズのイヤリングをつけて自作の詩を読み上げました。部族がオクラホマに追いやられる前、故郷であった南東部のマスコギー族の土地に戻ることをテーマにした「Exile of Memory(記憶の流刑)」です。

穏やかな道のつくり方を知っていますか?
                         人間の記憶をたどって
                         でも怒れる歴史の亡霊は?

ローラ・コルテッリ著「Winged Words: American Indian Writers(翼のある言葉―米国先住民作家の話」」という本の中にハルジョとのインタビューがあります。彼女はこう語ります。「私の場合は、感情や場所の種からスタートして、そこから移動していきます。もはや詩が終着点だとは思わなくなりました。それはどちらかというと旅。例えば、誰かの頬に当たる太陽、ある匂い、痛みなどのぼんやりした記憶を伴う何年もの長い旅。それが長い間経ってから、私の心の中にある一点、つまり言葉が入って来なければならない湖でふるいにかけられ凝縮していき、やがて一編の詩として結実するのです」

バナーイメージ:2019年10月27日、ハリウッドのドルビー・シアターで開催された映画芸術科学アカデミー主催の第11回ガバナーズ・アワード祭典のステージでスピーチする詩人のジョイ・ハルジョ (© Valerie Macon/AFP/Getty Images)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。