3月3日、今年のアメリカ大統領選挙は新たなステージに入ります。まるで天と地ほどの差のように状況が一変するのです。

これまで数カ月にわたり候補者は、2月に予備選挙と党員集会を実施した小さな4州を続けて回ってきました。ところが3月3日には、1ダースを超える州が同時に投票を実施します。

共和党・民主党の2大政党は、11月の大統領選挙本選で対決する候補者の指名決定に近づきます。現職のトランプ大統領が再選を目指すため、共和党の予備選挙を実施しない州もあります。しかし民主党の5人の候補者は、依然として党の指名獲得を目指し戦い続けています(無所属や他の政党の候補者の名前が11月本選の投票用紙に載るためには、2大政党の候補者とは異なるプロセスを経なければなりません)。

今年は3月3日が「スーパーチューズデー」として知られる火曜日に当たりますが、そのゆえんは、同じ日に14州で予備選挙が行われるからです。また、アメリカ領サモアでは党員集会が行われるほか、海外在住の民主党員も参加します。スーパーチューズデーの結果は、数字的にも勢いという意味でも重要になります。民主党の候補者は、党の指名獲得のため、夏の全国党大会に選出される代議員の過半数獲得を目指します。

スーパーチューズデーでは、全代議員の3分の1以上が選出されます。3月3日に投票を実施する州の中には、2月に実施された4州の予備選挙と党員集会で選出された誓約代議員数の合計(155)を単独で上回る州がいくつかあります。

「スーパーチューズデーは、候補者が全国的なキャンペーンを展開できるかどうかの最初の大きな試金石となります」。アリゾナ大学の政治学教授で、「Imperfect Primary」の著者でもあるバーバラ・ノランダー氏は言います。「スーパーチューズデーで、全国的に支持が得られるかどうかが分かるのです」

数カ月に及ぶ候補者選びの過程で、非常に多くの州が同じ日に予備選挙を実施すると決めたのは偶然ではありません。党のリーダーたちはまず、2月中の予備選挙実施を受け入れた4州を最初に選びました(アイオワ、ニューハンプシャー、ネバダ、サウスカロライナ)。3月3日は、それ以外の州が投票を実施できる最初の日なのです。

スーパーチューズデーに投票を実施するテキサス州で、期日前投票の有権者に投票所を示す英語とスペイン語の標示 (© LM Otero/AP Images)

スーパーチューズデーに投票を実施するテキサス州で、期日前投票の有権者に投票所を示す英語とスペイン語の掲示 (© LM Otero/AP Images)

結果をどうみるか

民主党の予備選挙では、獲得した代議員数を比例配分します。1つの州で少なくとも15%の票を得た候補者は誰でも、代議員を獲得できます。ノランダー氏によると、3月3日に向けて候補者は、時間と資金を費やす州を決め、最も代議員を獲得できる場所を計算するために高等数学を駆使します。

多くの代議員を獲得するチャンス以外に、スーパーチューズデーの勝者は、勢いを増し、注目を浴び、資金集めの機会を得ることができます。バージニア大学ワイズ校のヘザー・エバンス教授(政治学)によると、これまで単独の州ごとに選挙運動を展開してきた候補者は、アメリカのより広い地域で受け入れられる可能性の有無を知ることになります。また、幅広い階層の有権者から支持を得られるか、選挙ごとに勝者が入れ替わる重要な接戦州で力を発揮できるかどうかも分かります。

2008年や2016年の民主党予備選挙とは異なり、今年は有権者に多くの選択肢があります。スーパーチューズデー後には、勝算なしと見て撤退する候補が出てくるかもしれません。党が結束できるように、撤退した候補は他候補の支援に回ることもあるとノランダー氏は言います。「これまで築いてきた関係を壊したくないからです」