マイケル・ラフ

かつて視覚障害のある米国の革新者たちは、「洞窟」から成功への旅を始めました。

カリフォルニア大学バークレー校は、モフィット図書館の地下にあるその場所を、「視覚障害のある学生のための学習センター」と呼んでいます。しかし実際にそこを利用する学生は「ケイブ(洞窟)」と呼んでいます。

その呼び名は、センターの狭さ、古い家具、そしてコーヒーと本の匂いに由来します。

「ケイブ」はカリフォルニア大学バークレー校のモフィット図書館の地下にあった (© UC Berkeley Library)

「ケイブ」はカリフォルニア大学バークレー校のモフィット図書館の地下にあった (© UC Berkeley Library)

1980年代後半にセンターで学んだジョシュア・ミーレは、ボストン・グローブ・メディアが設立したメディア会社「STAT」に、「コウモリが集まる場所だった」と話します。

物理学を専攻するミーレの革新の旅はそこから始まりました。1990年に「障害のあるアメリカ人法」により公共施設における差別が禁止される以前、「ケイブ」はミーレなど視覚障害のある学生に仲間同士の結びつきや価値を提供する場所でした。

技術によってかき立てられた想像力

学生はセンターの鍵を持っており、いつでも新しいアイデアを探求することができました。最大の魅力は、他では見られない特別な技術がたくさんあることでした。

視覚障害のある学生が検索する言葉をコンピューターに打ち込むと、図書館のカタログやデータベースにある本や記事などが読み上げられました。これはインターネットが普及する何年も前のことです。

ミーレは後に、同じ「ケイブ」の卒業生であるマーク・サットンとバークレーシステムズの画面読み上げソフト「outSPOKEN」の開発に携わりました。

現在、ミーレは視覚障害者が使える触地図などの機器を開発しています。2021年には、技術設計者としての功績が認められ「天才助成金」と呼ばれるマッカーサー財団のフェロー賞を受賞しました。

サットンは、アップル社でソフトウェアの欠陥を見つけたり、視覚障害者がスマートフォンやコンピューターを使えるようにするための解決策を考案したりしています。

(左から)ブライアン・バシン、ロリ・グレイ、トーマス・フォーリー、ジョシュア・ミーレ (© Lighthouse for the Blind and Visually Impaired; © BORP; © National Disability Institute; © James A. and Catherine T. Foundation)

(左から)ブライアン・バシン、ロリ・グレイ、トーマス・フォーリー、ジョシュア・ミーレ (© Lighthouse for the Blind and Visually Impaired; © BORP; © National Disability Institute; © James A. and Catherine T. Foundation)

ミーレとサットンは、「ケイブ」で学んだ革新者であり社会起業家です。その他にも以下のような卒業生がいます。

  • ブライアン・バシン:サンフランシスコにあるLightHouse for the Blind and Visually Impairedの最高責任者。政府の契約企業と共に視覚などに障害がある人の雇用を推進するU.S. AbilityOne Commissionの会員。
  • ロリ・グレイ:バークレーにあるBay Area Outreach and Recreation Programのプログラム・マネージャー。障害者にレクリエーション活動を提供する。
  • トーマス・フォーリー:ワシントンにあるNational Disability Instituteの事務局長。競争的統合雇用を促進し、障害者の経済的安定を支援する。
  • ファテメ・ハギーギー:ニューヨーク市にあるマウント・サイナイ・アイカーン医科大学の神経科学教授。

ミーレは、バークレー校に在籍していた当時を振り返りこう言います。「自分は歴史や文化、さまざまな個性を持つ人たちが集まる巨大で最高にかっこいいコミュニティーの一部なのだということに気付き始めた。私はバークレーの障害者のコミュニティーと深くつながっていると感じるよ」