本稿は、3部から成る「米国の連邦制度」シリーズの第1回です。第2回、第3回はそれぞれ、地方政府をとりあげます。

米国連邦法は、全米のあらゆる州、市に適用されます。連邦議会と大統領は、連邦法の制定および施行で重要な役割を果たしますが、議会と大統領だけがこの役割を担うわけではありません。

米国立法交流評議会(ALEC)で国際関係と連邦制度を担当するディレクター、カーラ・ジョーンズ氏は、外交や防衛政策を実施する連邦機関を引き合いに出し「国務省や国防総省も必要」と言います。

米国は、地方、州および中央政府が権限を分かち合う「連邦制度」と言われる制度を採用しています。国民は、日常的に、しかしさまざまな形で、異なるレベルの政府と関わるため、この制度は理解すべき重要な概念です。

連邦政府の役割

州間の商取引および対外貿易の規制、宣戦布告、ならびに税制、歳出など国家の政策を策定ができるのは、連邦政府のみです。

多くの場合、まず下院議員435人、上院議員100人で構成される連邦議会が法律を制定します。上院については、人口に関係なく、50州それぞれに2議席が与えられます。下院議席数は、州ごとに人口に応じて割り当てられます。連邦議会が承認した法案は、大統領の署名をもって成立します。大統領は署名を拒否することもできます。

連邦議会が制定した法律を施行するのが、行政府です。行政府は、大統領、大統領補佐官、複数の省庁で構成されています。各省のトップは長官で、大統領が上院の助言および承認をもって任命します。米国には10を超える省があり、それぞれ特定の責務を担います。例えば、財務省は通貨の製造や管理を行ないます。

大統領はまた、米軍最高司令官も兼務します。つまり、武器使用、軍隊配備、軍艦派遣の命令を下すのは大統領です。軍の将官たちは、大統領からの指示を仰ぎます。

以下の図は、立法府、行政府、司法府に属する主な機関です。

(State Dept./J. Maruszewski)

連邦最高裁判所は、米国の連邦裁判所の頂点に位置し、米国民が法の下、公平な裁判を受けられるよう保証します。連邦最高裁は長官1人、陪席判事8人の計9人の裁判官で構成され、連邦議会が承認した法律、連邦機関が実施した規制、その他について合法性に疑義が生じた場合、公平かつ公正な立場で法を解釈します。

米国憲法は、全国民が選んだ大統領に判事を指名する権限を与えています。指名された判事は、立法府、行政府、司法府間の抑制と均衡を維持するため、上院の承認が必要となります。

トランプ大統領は、自らが連邦最高裁判事に指名したニール・ゴーサッチ氏の宣誓式が2017年4月に行われたとき、「建国者たちは権力を分割した。なぜなら、それが米国民と憲法を守る最善の方法だと分かっていたからだ」と述べました。

連邦最高裁が下した歴史に残る数々の判決は、米国の国民生活の方向性を示し、その影響は今もみられます。公立学校での人種差別を違憲とした1954年の「ブラウン対教育委員会」裁判は、その一例です。

連邦政府の立法府、行政府、司法府は、大統領が上下両院合同会議で一般教書演説を実施する際、連邦議会議事堂に一堂に会します。一般教書演説は、大統領が1年間の施政方針を打ち出す機会であり、通常、議会の新たな会期が始まった後の1月あるいは2月に実施されます。トランプ大統領の就任後初の一般教書演説は、2018年1月30日に予定されています。